大阪でのG20(20カ国・地域)首脳会合では、参加国のGDP(国内総生産)が世界全体の約8割を占めるというのが、話題になった。そもそも、世界に国は200かあるということは、今週刊行の拙著『消えた国家の謎』(イースト新書)で紹介していることはすでに本欄でも紹介した。
戦争直後には60カ国くらいだったが、現在では国連加盟国が193国ある。このほか、バチカン、パレスチナ、クック諸島、ニウエ(=南太平洋諸島の小さな島国)台湾、西サハラ、コソボなどがあるので、これらを含むと、世界にはちょうど200カ国がある計算になる。
当然に、これらの国の重要性や相互の関係は多様であるので、全地球を俯瞰するといっても、限られた外交資源を知恵を絞って上手に使っていくしかない。
安倍政権では、「価値観外交」ということで、欧米やオーストラリア、インドなど、「民主主義」「人権」「自由経済」「法の支配」といった共通の価値観を持つ国との連携を重視した外交を展開してきた。
また、中国やロシアには媚びることなく、しかし、大国として尊重し意思疎通を図っている。その一方で、韓国のように無礼な蛮行を繰り返す国には、毅然と対応してきた。G20で文在寅大統領とだけは、個別会談しないということは早くから予定されていたようだ。
そうした姿勢は、G20の前後における、安倍首相の時間の使い方にも如実に反映されている。
先週水曜日以来、安倍首相の会食相手を首相の動静についての報道で見ると、フランスのマクロン大統領、中国の習近平国家主席、G20首脳、ロシアのプーチン大統領、サウジアラビアのムハンマド皇太子と素晴らしい選択と密度だった。
イランを訪問して、最高指導者のハメネイ師と会見したことは、サウジとの話し合いに重みを与えた。イランとサウジの首脳と連続会談したことのおもみは計り知れない。
しかも、東京ではG20の翌日にトルコのエルドゥアン大統領、その翌日には、サウジのムハンマド皇太子が、天皇陛下を訪れている。この2人への特別扱いも中東外交ではたいへんな意味を持ったと思う。
一方、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とは握手だけで立ち話もなしで、鈍感な相手に「日本国民の怒り」を思い知らした。
ひごろ、あまり親日的とも思えないドイツ紙「ディー・ツァイト」が、安倍首相を世界のとりまとめ役として「最適の存在」と持ち上げたのは、東洋で価値観を共有できるのが「中国でなく、日本である」とドイツ人もようやく理解したことを示すもので、日本にとって大きな財産だ。
地元の歓迎ぶりはすでに書いたが、世界の首脳から大阪は美しい町だと誉められたことは、そういうお褒めの経験がなかった浪速っ子の自尊心をおおいに高めたと思う。それもこれからの大きな財産になるだろう。