参議院選挙の投票日は朝まで結果が出るのを待つために徹夜して、自身の落選が判明してからは夜までひたすら選挙でお世話になった人にお礼とお詫びの電話をしていました。ですから、自宅に戻ってからは自分が出た選挙のニュースを見ることなく、ひたすら寝ました。
私の落選というのは全体の中で見れば小さなことですけれども参議院の構成比、全体としてはこうなりました。
参議院選挙は3年に一度、半数が改選されますから、今回改正されなかった半数の議席と合わせると、自公政権で過半数は優に超えています。ただ、自公の内訳は今回公明党が議席数を増やし、自民党は議席を減らした結果になりましたので、自民単独での過半数を超えることはできませんでした。ですから公明党の発言力が今後は増すでしょう。
現在は自公連立政権ですから、そもそも自民党が過半数を超えていても公明党を無視して物事を進める事はありませんでした。それでも自民党が単独で過半数を持っているという根底論理は、自民党の発言にも公明党の発言にも影響があります。
さて、開票速報を朝まで見ていて気になったことがあります。
どこのテレビ局も「改憲勢力3分の2を超える。超えない。超えられない。」という見出しが多かったことです。
憲法改正を発議できる改憲勢力3分の2というベンチマークがこれほどまでに選挙速報で言われたのは、今回が初めてだと思います。
自公+維新を改憲勢力と呼び、これらの議席合計が160議席だったので、憲法改正の発議に必要な3分の2(164議席)に4議席足りない結果となりました。
結果を受けて、22日の記者会見で安倍総理は「これまでの自民党案にとらわれず議論する」と発言しました。
その自民党案というのは下記の4項目です。
○9条改正
○緊急事態条項
○参院選「合区」解消
○教育の充実
安倍総理がこの4項目を打ち出した時、私は公明党と維新へのメッセージだとわかりました。
9条については全体を書き換えるんではなくて、全体をそのままにして自衛隊を書き加える。
これは公明党の賛同を得やすくする為です。
教育については、教育の無償化を打ち出している維新の会の賛同を得やすくする為です。
しかし、総理は今回これにもこだわらないと言っています。
もちろん先ほど言ったように改憲勢力では3分の2に足りてないという今回の結果がありますが、もともと改憲勢力が混乱のうちに強行採決で憲法改正を発議するということは考えていないはずです。仮に強行したとしてもその後の国民投票で不利になってしまいます。だから野党を巻き込んで発議をしたいと考えているはずですが、共産党や社民党は無理でも少なくとも旧民主党系、少なくとも国民民主党は一緒に発議したいと考えての発言でしょう。
安倍総理の発言を受けて国民民主党の玉木雄一郎代表は、「国の最高法規である憲法はきちんと議論する。そのための環境を自民党と野党第一党が中心になって整えていくのが大事だ。9条だけでなく中身もわかりやすい議論を積み重ねていくことが大事だ」と発言しています。
ぜひ建設的な議論を進めてほしいと思いますけれども、何よりもメディアだって「改憲勢力3分の2」にあれだけ注目したんだから、議論することを妨害しないですよね。
※過去記事 【自民党大会・憲法改正】こっちに1歩、近づいてきましたよ!
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。