厚労省が、派遣労働者の時給を勤続年数に応じて引き上げさせることを指針としてまとめたようです。
【参考リンク】派遣社員、3年勤務なら時給3割上げ 厚労省が指針
そもそも“同一労働同一賃金”というのは担当する業務グレードで時給を決める仕組みなわけでそこに勤続年数の入ってくる余地はないんですが、厚労省の中の人が何を考えているのか筆者にはさっぱり理解不能ですね。
【参考リンク】派遣賃金「勤続3年で3割増」がむしろ労働市場改革に逆行する理由
そもそも、なぜ派遣労働者をはじめとする非正規雇用の時給は正社員より著しく低いのでしょうか。普通に市場メカニズムが働いていれば、クビになるリスクの高い非正規雇用労働者の方が時給が高くなるというロジックも成立するはずです。
というわけで今回は正規と非正規の時給のメカニズムについてまとめておきましょう。
法律でがちがちに規制された結果
現在、派遣労働者は3年を超えて一つの職場で働くことは出来ません。引き続き同じ職場で働くには派遣先が直接雇用に切り替えるしかありません(派遣元で無期雇用されている人は除く)。
また、民主党政権下で成立した有期雇用5年ルールという滅茶苦茶な法律のせいで、その他の有期雇用労働者も5年経過して労働者が申し入れれば企業は無期雇用に転換することが求められます。
直接雇用や無期雇用にすると解雇のハードルはとんでもなく上がってしまうので、やむを得ず多くの企業では派遣さんやその他の非正規雇用の人を3年や5年で雇止めにしたり別の部署に移したりしてぐるぐる回しています。
余談ですが、最近5年ルールで非正規雇用の人達が日本中で切られまくってるというニュースがたまに出ますけど、なぜか今の政府のせいにされてたり法律守らない企業が悪だみたいな論調になってたりするんですが、はっきり言いますが犯人は民主党政権ですから。
共産党もバリバリに推進した悪法のせいで被害が拡大しているのに、他人ごとのように報じる赤旗はさすが貧困ビジネスの老舗という感じです。
【参考リンク】独立行政法人 5年働いても 無期転換9400人ない恐れ
一方、正社員については原則として65歳までよほどのことが無い限り雇わねばならないという超長期の雇用期間が設定されています。
さて、仮にあなたがある企業の事業責任者だったとします。会社にノウハウを残したいような重要な仕事、付加価値の高い仕事を誰に任せるでしょうか。ほとんどの人は「ずっと会社にいてくれる正社員」を選択するはずです。
そして、そのアシスタント的なサポート業務や、マニュアル化して誰でもすぐに引き継げそうな付加価値の高くない作業は、数年で人の入れ替わる非正規雇用に任せるでしょう。
これが、正社員と(派遣をはじめとする)非正規雇用の賃金格差が大きな理由です。ですから賃金格差を本気で是正しようと思うのなら、正社員の解雇規制緩和と派遣を含む非正規雇用の雇用期間の上限を撤廃すべきでしょう。
そうすれば雇用形態にかかわりなく、やる気と能力のある人にはよりグレードの高い仕事が割り当てられ、どんどんリスクをとってチャレンジする人の時給がそうでない人を上回ることでしょう。
たまにプログラマー等の技術系の派遣社員で年収が1千万円超の人がいますが、あれは正社員として高い専門性を身に着けつつ2番へ自主的に移動したタイプの人材ですね。専門性さえ身に着けるチャンスがあれば、ちゃんとリスクに応じたリターンが上乗せされて正社員より高い報酬を受け取れるわけです。
非正規雇用の上限を撤廃するだけでも、同様に非正規雇用キャリアで専門性を身に着けて2番に昇格する人が増えるはずです。
まとめると、「付加価値の高い役割を優先的に与えられる正社員」と「付加価値の低いサポート的な役割しか与えられない非正規雇用」という具合に規制によって分割されていることが、両者の賃金格差の本質的な原因ということです。
そういう市場メカニズムを無視して政府が「3年で3割賃上げね」と言うだけでは、雇止めする企業がさらに拡大し、正社員と非正規雇用の格差がより固定化されるだけでしょう。
って、まさか最初からそれが狙いじゃないですよね厚労省さん?(苦笑)
以降、
正社員の2極化が始まった
「新時代の日本的経営」が予測していなかったこと
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Q:「残業を減らしたら『残業できないなら辞めます』という社員がいます」
→A:「減った残業代は還元すると理解させることが重要です」
Q:「技術系から人材開発はアリですか?」
→A:「超オススメです」
Q:「〇〇〇〇さんてどんな人なんですか?」
→A:「昔はすごい人でしたね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年7月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。