衝撃!パチンコ族議員を公言した尾立源幸氏の落選

尾立源幸氏(公式HPより:編集部)

参院選の結果をみると、選挙前と選挙後とあまり変わらないような…
世間的には、山本太郎氏率いる「れいわ新選組」の話題しか印象に残らなかった気がしますが、私としては、パチンコ族議員を公言して立候補した、尾立源幸氏が落選した…
ということが個人的には一番衝撃的な出来事でした。

参院選 比例区 開票速報 (朝日新聞DIDITALより)

自民党の二階さんからパチンコ業界直々に依頼があり、業界は政治連盟を作り、選挙資金も集める(噂では2億円)という肩の入れようで、業界からの組織票は20万人!と言われていたので、間違いなく当選するんだろうなと思っていました。

もう私としては、パチンコ業界と連携を図って、啓発に力を入れるとか、地域連携での依存症対策を構築したい!なんてことは妄想に過ぎないと、この数年のことではっきりわかりましたので、
そんな希望的観測は捨て「ぱちんこ業界はぱちんこ業界のための依存症対策しかやらない」という大前提のもとで考えていかなくちゃならないなと思っているので、そうなるとこの尾立氏がどんな主張をするのか?一応気にかけておりました。

ただ、そんなに深追いしていたわけでもないので、余計わからなかったのかもしれませんが、どうやら「パチンコ台の規制緩和」を訴えているんだなということはわかりましたけど、その他には、何を実現したいのかが良く分かりませんでした。まさか「パチンコ台の規制緩和」というワンイシューだけで立候補した訳じゃないですよね???

Twitterでもそれらしい主張もないなぁと思っていたら、ネットニュースで実はパチンコ関連は別の「おだち源幸777」というアカウントが存在していて、しかもそれがどういう理由かわかんないですけど凍結されたとのこと。

自民党・尾立源幸候補に向けられた「一大産業なのにマイノリティ」なパチンコ業界の期待と不安(ハーバービジネスオンライン)

なんじゃそりゃ?と思いますよね。なんでわざわざ別のアカウントなんて作るんですか?
それって業界には「パチンコ族議員を目指します!」とリップサービスしておきながら、世間にはパチンコ業界からの支援を受けてることは極力隠したい…ってそんな感じですよね。

政治の世界にちょっとだけ首突っ込んでみると、こういう議員さんって割と多くて、この点ではパチンコ業界に心から同情しますね。金と支援を受けたんなら堂々とすればいいのに!?
こういう中途半端な感じが祟ったのか!?わからないですけれども結果尾立氏は落選したそうです。

私、参院選の日が大阪出張で、夜中12時近くに帰ってきて、いろいろばたばたしていたので、明け方4時頃「そう言えば尾立氏はどうなったかな?」と思って検索したところ、どうやっても当選者の中に出てこないので「もしかして落選したの?」とびっくり仰天した次第です。

今回の選挙では実に大きな示唆があったと思うのですが、俗に言う「組織票」というのは今や幻だな…ということですね。

パチンコ業界の心配をしている場合ではなくて、我々依存症業界でも、アルコール・ギャンブルの基本法で共にお世話になった中谷元先生をはじめとして、心強い国会議員の先生方がいる反面、当然我々にとって困った議員という方々もいらっしゃるわけですよ。

そのお陰で、自殺対策からメンタルヘルスの観点は排除されてしまいましたし、薬物だって「ダメ絶対!」大好き議員もいる、もちろんカジノ推進派で「ギャンブル依存症なんか自己責任だろ!」と思ってる議員もいれば、公営ギャンブル、パチンコ業界ともに「依存症対策を強化しないでくれ」という業界からの依頼を受け、そのために動いている議員もいるわけですよね。

でも、どんなに困った議員がいても、どんなに困っている課題があっても、パチンコ業界ですら情報共有し一枚岩になれない訳ですから、資金力も発信力もない私たちは尚さら危機感を共有できないよな…と思いました。

これは依存症界の大きな課題だと思います。
もういい加減私たちも「誰かがなんとかしてくれる」という甘えを捨て、国から殆ど支援がうけられていない自分たちの世代だけでなく、このような社会に取り残された現状を、孫子の代にまで引き継がぬよう、一人一人がやれるだけのことをやる!
そのためには政治にも関心を持って貰い働きかける!
政治についてもっと勉強し、情報収集に力を入れる!

こういう労を惜しまぬ姿勢が必要だと思いました。
「いざとなったら仲間がただちにまとまれる!」なんて幻想にすぎないですね。

そのためにいかにわかりやすく、問題点や改善点そして政治活動など、中央に近い東京にいる我々が仲間に広報できるか!ってことにかかっているなぁと思いました。

我々は、力をあわせることができれば決してマイノリティではないです。
アルコール、薬物、ギャンブル、それにゲームが加わり、その他摂食障害なども加えていけば、その当事者、家族の数は数千万人になる訳ですから。

ただ我々「アルコール健康障害基本法」ができるまでは、政治に本当に無頓着だったと思います。
けれども「ギャンブル等依存症対策基本法」も成立したいまでは、我々だって声をあげれば何かを変えられることがわかりましたし、今回のパチンコ族議員への動きのように、相手方は味方を作ろう!と必死に動く訳ですから、こちらも頑張らなくてはなりません。

参院選は終わりましたけど、近々衆院選がやってくることでしょう。
その時には、また我々の応援をして下さる先生方が当選して下さるように、力をあわせていきましょう。

組織票は相当な努力がなければ、意志の疎通は図れない!
これが尾立氏の選挙戦から学んだ教訓です。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト