もう一度考える東アジア情勢

「きな臭い」、そんな言葉すら出てくるような雰囲気です。日韓だけで揉めているならこれは二国間問題となるのですが、先日のロシア軍用機が竹島付近を領空侵犯し、韓国側が360発あまりものの警告射撃を行ったこともよくわからないし、その時、中国も同様に同地域で領空侵犯していました。

(写真AC:編集部)

ところで、北朝鮮は世界食糧計画を通じた韓国からの5万トンのコメ支援を断りました。喉から手が出るほど欲しいコメを断ったその理由について韓国メディアは8月に予定されている米韓合同軍事演習への反発だとしています。また、昨日には新型の短距離弾道ミサイルを再び飛ばしています。これについてもやはり合同演習へのけん制ではないか、と見られています。

一歩下がって考えてみたいと思います。まず、日韓の問題ですが、このところ異様にヒートアップしているのが韓国。日本も報道は多く、今まで以上に一般の人の関心も高まっていると認識していますが、日本政府が比較的冷静な立場を貫いており、安倍首相からも特段目新しいコメントは聞こえてきません。ということは日本側は粛々と、韓国側はワンワン大騒ぎ、の違いがあります。

この二か国間の不仲ぶりは今や世界では誰もが知るほどの犬猿ぶりであり、誰もそんなところに首を突っ込みたくないというのが本音なのでしょう。WTOでもほぼスルーされたのはご承知の通りです。

では文大統領から仲介を頼まれたトランプ大統領はどうでしょうか?ボルトン大統領補佐官は訪韓の際、もしも何らかの使命をトランプ大統領から受けていたらそれなりのやり取りや姿勢は見せたはずですが、これもほぼスルーでした。つまり、アメリカはとりあえず「知らんぷり」をしています。

この構図は勝手にヒートアップする韓国を放置プレイしていると考えられないでしょうか?そうだとすればなぜでしょうか?

このところ、私は違うシナリオがあるのではないか、という気がしています。そのキーは北朝鮮であります。北朝鮮のコメ拒否や新型ミサイルは何のためにやっているのか、ですが、米韓合同軍事演習そのものではなく、金正恩委員長が大好きなアメリカが韓国と仲良くすることに対し、嫉妬しているのではないか、とする方が素直に理解できるように思えるのです。

ほとんどのメディアのトーンは北朝鮮がアメリカに挑戦しているという書き方なのですが、そうではなく、私は北朝鮮が初めからそんな大それたことは考えておらず、彼らの示威行為とは韓国へのプレッシャーであり、アメリカには「こんなおもちゃもあるよ」という子供同士が自分の宝物を見せ合うような感覚ではないかと考えています。

換言すれば、北朝鮮は韓国がお嫌い、とした方がシナリオがすんなり理解できるように感じるのです。

北朝鮮が何故韓国が嫌いか、と聞かれればそれは朝鮮半島の歴史を紐解いてほしい、と言うほかありません。過去2千年の半島の歴史は基本的に半島の付け根が南を支配する構図となっています。理由は中国に近く、中華思想における中心円により近い距離にあるから、とだけここでは申しておきます。

となれば北朝鮮が描くシナリオとは韓国の支配であり、韓国から米軍がいなくなれば自分の友達と思っているアメリカと戦わなくてよいのでやりやすくなる、というストーリーラインが描けないでしょうか?

これをニヤニヤしてみているのが中国やロシアです。アメリカは日韓なら日本につかざるを得ないものの今、それを明白に表明できないので「我、関せず。ただし、ABEが何か言ってきたら考えるよ」だと思います。

これならばどの国も距離を置く韓国に対して中国とロシアが竹島の傍で挑発したのも分かります。日本は竹島のあたりは防空識別圏にないので自衛隊の緊急発進がないことぐらいはロシアも分かっており、韓国政府を少し困らせてみようか、ぐらいの感覚であったかもしれません。

戦略的な半島は歴史上、常に様々な問題を抱えることが多くなっています。朝鮮半島はその最たるものです。今回の問題はチャンスを虎視眈々と狙っている国々が数多くあるように感じます。それは経済的価値が限定的な北朝鮮ではなく、韓国へ視点が移ってきているのかもしれません。

日本は引き続き、クールな立場を取り続けるのが賢明であり、紳士的かつ論理的にやるべきことをやっていくというスタンスでよいのではないでしょうか?このままでいけば韓国の国内世論が分裂する可能性もありうる気がします。これもまた「歴史は繰り返す」であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年7月26日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。