吉本へ愛社精神はないの?ギャラ公開は得策ではありません

尾藤 克之

反社会的組織の宴会に参加して謹慎処分を受けた、宮迫博之さんと田村亮さんの2人の記者会見を受けて、7月22日に吉本興業の岡本社長が会見を行いました。しかし、発言の不合理さが指摘され芸人が蜂起するさわぎになっています。

田村淳氏Facebookより:編集部

ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんはツイッターで「若手芸人ファースト」を掲げます。後輩達の処遇の判断を優先してほしいことや、蓄えがありしばらくの間は生活していける先輩達とは違い、後輩達はその日の収入があるかないかは死活問題であると思いますと処遇の改善を訴えました。

さらに、27日、文化放送「ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB」に生出演して、ギャラの配分が明らかになった際には「この番組で“何対何”か発表します」と宣言します。しかし、ギャラの配分の公開は好ましくないと考えます。ギャラの情報は企業秘密に該当する可能性が高いからです。

情報を見聞きすることは避けられませんが、公の場での公開は「改正・不正競争防止法」に抵触する可能性があります。「営業秘密侵害」の罰則が強化されています。ギャラをリークする情報漏洩は図利加害目的というものです。これは、背任罪の構成要件のひとつです。他人に損害を与えようとすることで成立する可能性があります。

多くの利害関係者にとってギャラ情報は「垂涎の的」かも知れませんが、情報公開は拙速でしょう。結果的に誰も得をしないからです。貧乏芸人が救われるわけでもありません。世間の同情は集まるかも知れませんが、給料アップにつながるとは思えません。問題提起と考えているならリスクが大きいので得策とは言えません。

あなたが社長の立場だとします。部下が「オレは自分のブログで『ギャラの配分が明らかにする』『このブログで“何対何”か発表する』」と多方面で吹聴していたらどう思うでしょうか。この時点で、社長の名誉や体裁、世間からの評価はどうなるのでしょうか。マネジメントの観点で考えれば、水面下で解決すべき事項です。

コンピテンシーレベルの高い人は、不満を公には口にはしないでしょう。組織影響を考えて「どうやったらギャラの問題を解決できるのか」という視点で多方面に働きかけるはずです。不満をもつ人はこの機会に独立されてはいかがかと思います。力があれば、稼ぐこともできますし、希望通りの環境が実現できるはずです。

個人的に、田村淳さんは好きな芸人さんなのでエールを送ります。もっと違うアプローチで。なお、ご関心のある方は昨日のエントリー「吉本を辞めるという発言は不適切!水面下で解決すべき事案」もおススメいたします。

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)
14冊目となる著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を上梓しました。