アゴラは自由な言論の場である。明らかな事実誤認などの不適切な発言を除いて、どんな意見を表明するのも自由だし、それは編集部の見解でもない。早川忠孝さんの「国会議員の介助の費用は、れいわが持つべきじゃないかな」という意見は、最近の国会で行われている議席改修の工事を見た素直な感想だろう。
それを批判するのも自由だが、山田肇さんの「早川氏の主張は障害者差別」という決めつけには根拠がない。「障害者差別解消法は障害者への合理的配慮を求めている」というが、その合理性の基準は誰が決めるのか。
国会の議席に人工呼吸器を設置する工事が合理的なら、駅やデパートはどうするのか。日本中のすべての公共空間に人工呼吸器用の設備を設けるのか。その費用は、今回のようにすべて税金で負担するのか。
障害者の介助は自費が原則であり、このルールに差別はない。介助や設備の費用を公費で負担する場合は、一定の基準を満たす必要がある。その合理性の基準は費用対効果である。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者は全国で約9600人といわれている。こういう少数派のために日本全国の公共施設を改造したら、コストがかかるだけでなく使いにくくなり、残りの圧倒的多数の国民が迷惑する。
障害者の介助にどこまで公的支援が必要かは、民主的決定によるしかない。そういう問題を国会が論じるのはいいが、その「当事者」が国会議員になる必要はない。日本の国会は代議制民主主義であり、当事者が決定する直接民主主義ではないからだ。国会議員は「国民の代表」であり、一部の障害者の代表ではない。
それでも有権者が彼らを選挙で選んだのならわかるが、今回当選した2人の障害者の得票は、合計しても3万票程度。彼らは参議院選挙の「特定枠」という制度の抜け穴を利用して当選したのであり、正当な国民の代表とはいえない。
山田さんが日本中バリアフリーにしろというのは自由だが、それとは異なる意見に「障害者差別」というレッテルを貼って糾弾するのは「人権団体」が批判を封殺するときの常套手段である。
マスコミもそれを恐れて障害者の問題を批判的に扱わなくなったが、アゴラにはそういうタブーはない。こういう脅しに屈しないで、障害者の問題も事実にもとづいて冷静に論じていただきたい。
池田 信夫