大賞はマカロニ、ロニ、ロニ!対象は2歳からでもオッケー

尾藤 克之

先日、絵本出版.com「第3回絵本出版賞授賞式・出版発表会」授賞式・記者発表会に参加してきた(開催場所は神保町の「こどもの本専門店・ブックハウスカフェ」)。アゴラでもおなじみの、城村典子さん、松崎義行さんが手掛けている出版イベントである。今回の「絵本出版賞受賞作品一覧」はこちらを参照のこと!

「第3回絵本出版賞授賞式・出版発表会」の会場

ポエムピースの松崎社長

ノンフィクション作家の柳田邦男は「絵本は人生で3度読むべきもの」と解説している。3回とは、「自分が幼い時」「親になって子どもを育てる時」「人生の後半、祖父母の時」の3回。よい絵本は歳を重ねていっても読むたびに新たな感動がある。新たな感動とは、年齢によって異なる視点が楽しめるという点ではないかと思う。

『なにになるのマカロニさん』(まるやまなお著)

絵本出版賞大賞受賞作品はなにになるのマカロニさん(まるやまなお著)。特徴的なイントロで物語りは始まる。

「きょうは、たろうくんのおたんじょうび。おともだちも、やってきました。パパは、おいしいりょうりをつくろうと、ぼうしをかぶって、じゅんびばんたんです。だいどころでは、たべものたちが、なにになれるか、ワクワクドキドキ」

主人公は「マカロニ」。国や地域によって、意味する形状に違いがあるが、短い穴の開いた棒状のアレだ。乾燥したアレは茹でて使うことが多い。イタリア語のマッケローニは主に穴のあいた棒状のものを指し、茹でる際に適当な長さに折って用いる。英語では、穴の開いた棒状の短いパスタのみを意味する。

子供のイマジネーションを高めるストーリーが興味深い。パパがマカロニを忘れてしまいあやうくゴミ箱行きになるシーンがある。「くさってすぐにカビだらけだ!ニャハハハハ」。ここに登場するネコの表情が素晴らしい。「チキチキマシン猛レース」に登場する「ケンケン」(これは犬だが)みたいに意地悪そうでステキだ。

マカロニは「捨てられたくないよ」と泣き出してしまう。そこにパパが登場。少し考えて袋に入れてしまう。ゴミ箱に捨てられると思ったマカロニは大パニック。「パパ、僕たちを捨てないで」「ゴミ箱なんか行きたくないよ」。しかし、パパはゴミ箱に向かう。マカロニに迫る危機。いったいどうなってしまうのか!!

この作品を読むと「好き嫌いをしてはいけない」「食べ物を残してはいけない」ことがわかる。大人になったいま、絵本と向き合うと、幼い時には気付かなかったメッセージに気付くことがある。絵本と向き合うことで自分の感性と向き合うことができるはずである。今回の、授賞式・記者発表会で、絵本の持つ可能性を改めて認識した。

いまは、出版不況と言われている。絵本は、子どもを対象にしたものと考えていたが、最近では大人にも人気が出ているようである。また、出版業界で唯一伸長している領域が「絵本」ということにも驚いた。絵本には夢がある。受賞した皆さまの前途を祝したい。

[本書の評価]★★★★(80点)
評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し  「レベル0!読むに値しない本」50点未満

さて、14冊目となる『3行で人を動かす文章術』を上梓した。正しい文章を書きたい人には役立つ内容ではないかと思われる。

尾藤克之(コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員)