輸出管理で手続きを優遇する「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことについて、韓国では反日だけでなく「反安倍」がひとつの動きになっている。
となると、心配なのはテロである。なにしろ伊藤博文を暗殺した安重根を英雄として扱って憚らない国だ。かつて朴槿恵大統領は、ハルピンに安重根の記念館をつくることを習近平に要請し実現した。
かつて私は、「父母をテロで失った朴槿恵が安重根を顕彰するのはまことに不思議で親不孝。中国もウイグルなどの独立派のテロリストが指導者を暗殺したら将来、英雄になれるとメッセージを送っているようなもので、愚劣の限りだ。テロ反対は無条件でなければならないし、テロリストを英雄にしてはならない」とかつて書いたことがあるが(アゴラ:2016年12月20日「ロシア大使暗殺。テロリスト安重根を「英雄」とする中韓の反応は?」)、ともかく、安重根を英雄にしているようでは、日本人がテロを警戒するのも仕方あるまい。安倍首相だけでなく、各方面において警戒すべきだし、東京五輪でも同様だ。
少なくとも、文在寅大統領は、絶対にテロとか日本人への危害を加えることがないように国民に呼びかけた方がいいいし、そういう、ことは雰囲気の改善に寄与するだろう。ここでテロでも起きたら日韓関係の修復は絶望的だ。そして、それを抑制できるのは文在寅大統領しかあるまい。
そうしたなかで、保守系の『中央日報』が 「『安倍首相、韓国に対し目も耳も塞いだ』…強硬モード長期戦の態勢」という記事を掲載しているが、ある意味でよく分かった記事なので、いくつかの言葉を拾ってみよう。
「安倍首相の韓国に対する強硬モードは複雑な政治的計算の結果だ。このような強硬モードを安倍首相がすぐに撤回する可能性はゼロに近い」
「安倍首相は『けりを付ける』という考えで、韓国に対し目も耳も塞いだ状態」
「安倍首相が韓日関係を契機に国内政治だけでなく、国際政治的にもアジア地域でのプレゼンスを確固たるものにさせるという計算を終えたという話も出ている。韓国に対する超強硬モードを自分の外交レガシー(Legacy、遺産)としようとしている」
「米国と連合し中国に対抗する戦線を構築する過程から韓国を排除できる環境を作り上げる可能性もある」
「韓国が二度と歴史問題で謝罪と賠償を要求できないように釘を刺すことを自身の外交目標としたものとみられる」
「緻密に戦略を組み機敏に動いてきた。この過程で日本の内傷も耐えようという計算も終わったと」
「韓国政府がより緻密で賢く対応しなければならない」
「今になって日本政府と安倍首相が立場を変えることを何もせずに期待するのは無理」
「韓国政府が名分を作り日本を動かす知恵を絞らなければならない」
こうした中で、世耕経済産業相は2日の閣議後の記者会見で、パブリックコメント(意見公募)で、寄せられた意見が4万件超、そのうち95%超が除外に賛成する意見だったことを明らかにした。その意見のほとんどはこれを「制裁」と思ってのことだろう。
「公式の場で日本政府が如何に否定しようと、今回の措置が徴用工問題で韓国に対して行われた報復措置の意味合いを帯びていたことについて、また一つ韓国に絶好の証拠を提供した格好。海外メディアもほとんど「実際には報復措置だ」という報じ方。」
という津上哲哉氏の指摘も一理ある。
「これは制裁でない」といいつつ、してやったり調の説明ぶりは冷笑的で対外イメージがいいとは思わない。ゴーン事件のときもそうだが、いかにも経済産業省がうわべと違う意図でなんか企んでいるというイメージを海外に与えるのは愚策中の愚策だと思う。
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授