展示作品は芸術でなく政治の小道具 〜 経緯を含めて次元を変える悪知恵 

足立 康史

1. 展覧会の中止でなく展示物を撤去すべきだった

愛知県で一昨日8月1日に開幕した国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展」は、開幕3日目をもって中止されることとなりました。愛知県の大村知事や芸術監督を務める津田大介氏は会見で「テロ予告や脅迫とも取れるようなメールが寄せられ、安全な運営が危惧される」ことが中止の理由だと述べたそうです。

NHKニュースより:編集部

明日4日にも現地に出向いて、直接、自分の目で展示内容を確認しようとさえ思っていただけに、こうした幕引きは残念でなりません。慰安婦像や昭和天皇の御影に係る作品だけを撤去すれば検証もし易いのに、運営の安全面に係る判断を理由に展示会そのものを中止したのでは、今後の検証等もままならないことが危惧されます。

もちろん、そんな展示は一刻も早く見えなくしてくれ、という国民の声も分かりますが、今回の事件は、展示会が中止になったから済むというような軽い問題ではありません。このまま有耶無耶にするのでなく、なぜ開催されたのか、中止の理由は何か、公金支出の審査手続きを軸に、徹底した検証が必要と考えています。

2. 展示作品は芸術でなく政治の小道具

公金支出の審査手続きを軸に検証が必要と書いたのは、今回の騒動は、最初から最後まで、数億円もの公金が支出されていたという公金支出問題だったからです。河村名古屋市長は「10億円も税金を使った場所で展示し、あたかも公的にやっているように見える」と主張し、同市長に連絡し展示が問題だと指摘した松井一郎大阪市長も「国民の税で展示されるのは違う」と指摘した通りです。

そして、公金支出の審査手続きに課題があるとすれば、これは現時点での私の仮説ですが、美術でも、芸術でも、アートでもない、単なる政治運動の大道具・小道具を陳列する政治プロパガンダ、政治運動そのものが、芸術祭の冠の下に、公金支出の可否を厳正にチェックすべき審査をくぐり抜けてしまったという問題ではないかな、と感じています。

私は最初、「表現の不自由展」の作品群が(現実とは次元の異なる)本当に美術であり芸術でありアートであって、額縁の中や展示ゾーンの中に収めることが出来るなら、それはそれで良いと考えました。かねがね共産党を博物館に陳列すべきと訴えている立場からすれば、美術館、博物館に陳列することは即、次元の異なる現実社会のリアルではないと判断できるからです。

しかし、鑑賞した方の報告によると、会場に入ってすぐ、細い展示通路の壁にTVモニターがあり、昭和天皇の御影を焼くシーンが含まれる映像が上映されていたのだそうです。次いで、反米、反基地、憲法9条、慰安婦像のオブジェなどがズラリ。こうした報告を読んでみると、結局、「表現の不自由展」で作品とされたオブジェ等は、すべて政治運動の示威行為に使われてきた大道具、小道具ではありませんか。

NHKニュースより:編集部

既に現地に出向いて検証することもできない中では「後の祭り」かもしれませんが、愛知県や文化庁の審査手続きがどう行われたのか、政治活動家でありジャーナリストである津田大介氏がなぜ芸術監督に選ばれたのか、なぜ開催されるまで問題視されなかったのか、中止の本当の理由は何だったのか、国会でもしっかり検証をしてまいりたいと存じます。

3.  経緯を含めて次元を変える「悪知恵」

「日本の公立美術館で、一度は展示されたもののその後撤去された、あるいは展示を拒否された作品の現物を展示し、撤去・拒否された経緯とともに来場者が鑑賞することで、表現の自由を巡る状況に思いを馳せ、議論のきっかけにしたい」

津田氏によると、これが今回の「表現の不自由展」のコンセプトだそうです。なんと悪知恵が働く御仁なのでしょうか。このコンセプトを読んで思い起こしたのは、総務委員長の職権で削除の対象になった自分の発言を<経緯を含めて>改めて議場で紹介した私のアプローチでした。

一昨年、2017年2月21日の衆院総務委で私は、山尾志桜里議員の政治資金規正法違反の疑惑を取り上げたのですが、7か所もの正当な発言が委員長職権で削除されてしまったのです。そこで私は、3月7日の総務委員会で、削除の対象になった自分の発言を<経緯を含めて>改めて議場で紹介したのです。

こうした国会での僕のアプローチに、竹内総務委員長は、怒りつつも、なかなか良く考えたな、賢いな、やられたな、といった爽やかな対応でしたが、民進党と共産党は、怒り狂ったように抗議をしてきました。

ダブルスタンダードはいけません。

いったん撤去・削除されたものを、撤去・削除された<経緯を含めて><次元を変えて>示すことで批判を逃れようとする。同じような知恵を働かせたことのある私は、津田氏の悪知恵を「面白い!」と評価もしましたが、当時、僕に対して怒り狂って抗議した民共は、今回も怒り狂って展示に反対しないといけなかったのではないでしょうか。

そんな違和感を拭えない一日が終わりますが、今回のような不祥事が二度と起こらないよう、しっかり検証をし、国会としても対策を講じてまいりたいと存じます。

足立 康史  衆議院議員


編集部より:この記事は、衆議院議員・足立康史氏(日本維新の会、比例近畿)の公式ブログ 2019年7月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は足立氏のブログをご覧ください。