対韓歴史戦は「専守防衛」から脱却せよ

田村 和広

日本が韓国と日韓基本条約および日韓請求権協定を締結したのは、東西冷戦構造を背景とした地政学的な要請からであった。以来日本は諸条件において常に譲歩することで関係維持に努力してきた。

1991年12月ソ連が自滅し東西冷戦は米国の勝利が確定したが、代わって中国が米国との競争を引き継いだ。2017年トランプ氏が大統領に就任すると米国は対中政策を「貿易戦争」へと大きく変更した。

種々の前提条件が変化した今こそ、朝鮮半島に対する歪んだ日本の政策を適正化するときである。そのための具体策として「河野談話」と「教科書近隣諸国条項」(宮沢談話)という2つの「負の資産」について、廃止の検討を日本国政府に求めたい。

文大統領(大統領府FB)、河野洋平氏、宮沢喜一氏(政府サイト)=編集部

文化に根差した価値観の違い

日本人には自分の価値観を韓国も共有してくれているという誤解があった。しかし、日本と韓国の間には極めて大きな差異がある。

差異1:法の価値観

「相手を縛る法は主張し、自分を縛る法なら無視する。」この行動規範は一見あり得ないが、それは「法の支配や法治という価値観」を共有する国々の間だけである。韓国は「情治国家」または「人治国家」とも形容され、国民感情が最高法規でありかつ遡及法も許容する国なので、我が国とは重要な価値観を共有していない。

差異2:「歴史」の定義

「歴史」という単語の定義も日韓間では全く異なる。日本では事実に基づいて実際に起こった事柄の積み重ねを歴史と考えているが、韓国では自国の成り立ちや現在の立場を有利にするためのファンタジーであり、公正な一次資料などの根拠は不要である。

差異3:「勝利」の判定基準

スポーツにおいては審判の買収疑惑や不服判定へ長時間抗議、芸能活動においては人気の度合いを人為的に操作している疑惑など、実態ではなく評価を強引な活動で勝ち取ればよいとする価値観もまた韓国人の特筆すべき性質だろう。

環境変化について

一つ一つは徐々に変化するので認識し難いが、文在寅大統領になってから韓国の対日政策は激変している。簡単にいうと、韓国は国と国との約束を反故にし、もはや日本を「敵国」として国家運営していると見なさざるを得ない。北朝鮮政策も考慮すると米国陣営から中国朝鮮陣営へ韓国を導こうとしていると言っても過言ではない。

この文政権下の韓国に対し米国も従来とは明確に異なるスタンスで接している。朝鮮戦争以来、安全保障上の戦略から朝鮮半島における韓国エリアの重要性は常に高かった。しかし状況は変わった。米国は中国本体との直接的な経済戦争に着手し、北朝鮮を直接自らの手で「制御」しはじめた。その状況を反映し物理的前線である38度線の重要性は相対的に低下している。更に、朝鮮半島国家の異常性にも気が付いており、日本に対して従来の枠組みを維持する圧力もかからない可能性が高い。

対韓歴史戦「専守防衛」とは

韓国にとって歴史とは日本を攻めるための武器である。そのため歴史で最も重要なことは「事実」ではなく「破壊力」である。要するにプロパガンダ戦である。しかし日本人には戦をしかけられているという自覚さえない。

日本は、紛争解決の手段として「戦争を放棄」しているが、論戦までも放棄してしまっているようである。プロパガンダ戦においても専守防衛を堅持し、外国の自由な先制攻撃を許し、反撃をしないのだ。本来、武力行使の縛りが厳しい分、日本は武力以外の、例えば論戦能力などを一層強化しなければならないはずだ。

一般的に攻撃側は、対象エリア(テーマ)とタイミングに関して主導権を握り、相手の防衛体制が整わないうちに第一撃から深く進攻してくるので、これを押し返すのは困難である。

特に論戦において攻撃側は、対象テーマについて自由に「名づけ」をすることができる。実を伴わない名前をつけることは詭弁だが、日本人はこの詭弁的な名づけを易々と受け入れてしまう。その言葉を使用した瞬間に、苦戦や敗戦が確定してしまう。

「従軍慰安婦」は、「慰安婦を題材とする詐欺的反日活動事件」だがまるで被害者がいるかのような論を張られる。その土俵で戦う限り「被害者」は無敵である。「徴用工」は、「戦時朝鮮半島出身の我が国労働者」だが、日本のマスメディアは言葉が内蔵する「刃」を無自覚につかみ国内に大量に注いでしまう。「不法な植民地支配」は、「遡及法的歴史の改変問題」だがその認識は日本人にはあまりない。

「レーダー照射」、「戦犯旗」、「貿易規制強化」など、日本人はこれらの飽和攻撃に対応できない。専守防衛という戦略では、この執念深い上に嘘への心理的抵抗が全くない民族とのプロパガンダ戦に勝つことは難しい。そこで防衛措置ではなく次のような反撃を提案したい。

反撃1:河野談話の廃止と新方針の検討

いわゆる「河野談話」の中では、特に下記の2点は事実との乖離が激しい。

慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。

“慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、(略)官憲等が直接これに加担したこともあった”

※ともに河野談話(外務省サイト参照)より抜粋

その結果、「『慰安婦の強制連行』があったことを日本政府が認めた」ということになってしまった。これらの表現は事実と違うにもかかわらず、政治的な配慮から安倍政権でさえも踏襲するとしている。見直しを再度検討すべきである。河野談話は廃止のうえ事実に基づく新方針を打ち出すことが望ましい。

反撃2:近隣諸国条項の廃止

近隣諸国条項によって教科書がいびつになっている。過去に深刻な紛争を抱えた二国間で、双方の納得感の高い共通の歴史認識を構築することはまず不可能である。実際の教科書採用は各地の教職員の政治的な主張と連動するので、近隣諸国条項の廃止ですぐに適正化されるわけではないが、選択肢全てが偏っている状況をまずは改善したい。日本国政府には、再度近隣諸国条項の廃止を検討して頂きたい。

教科書に現在も残るひずみ

“「歴史教科書」に関する宮沢内閣官房長官談話”の中に下記のような文言があり、これらが現在でも歴史教科書を歪めている。

我が国としては、アジアの近隣諸国との友好、親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府の責任において是正する。

我が国としては、今後とも、近隣国民との相互理解の促進と友好協力の発展に努め、アジアひいては世界の平和と安定に寄与していく考えである。

※全て宮沢談話(外務省サイト参照)より抜粋

歴史歪曲の具体例

日本の歴史教科書には、特に韓国による歴史歪曲の影響が残っている。具体的には、任那の消失、李舜臣の誇張的記述、朝鮮通信使の歪曲、東郷平八郎の意図的隠滅、日本が受けた被害の隠蔽、事実ではない日本の加害の誇張、「侵略」と「侵攻」の悪意ある使い分けなど、数え上げればきりがない。

まとめ

安倍晋三首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げている。ならばこの機を捉え、憲法改正に加え「河野談話」と「教科書近隣諸国条項」の廃止もその一環として推進して頂きたい。

改元後はじめての終戦記念日を迎えるにあたり、タブーを恐れず主張することで英霊に対する尊崇の念としたい。

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。