74回目の終戦記念日:先人たちの失敗から何を学んだのか

8月15日74回目の終戦記念日と呼んでいる敗戦記念日を迎える。11日の夜、NHKで「激闘ガダルカナル  悲劇の指揮官」という番組を見た。ガダルカナル島で全滅した一木大佐率いる支隊に焦点を当てた番組であった。多くの兵士が戦闘ではなく、飢餓で亡くなったという事実は胸に突き刺さるものがあった。

NHKスペシャル「激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官」より:編集部

あの戦争で数百万人の日本人が命を落とした。私の叔母二人も米軍の空襲で命を落としている。もちろん、私が生まれる前の話で、写真でしか見たことがない叔母たちだ。ソルトレークシティーとシカゴ、合計11年以上米国で暮らしたが、広大な土地と膨大な資源、戦争をしても勝てるはずがなかった相手であると実感せざるを得ない。どこから見ても無謀な戦争ではなかったのか?

ガダルカナル島での戦闘も、あまりにも戦力差・物資の差がありすぎたようだ。NHKで亡くなった兵士の姿が映されていたが、ガリガリにやせ細っていた。生き残った90代の方が、食べるものがなく、ミミズを食べていたと涙ぐみながら話をしている姿を見て、思わず、目が潤んできた。戦争は恐ろしい。

番組では、陸軍と海軍のメンツ争い、戦略なき無謀な戦いを批判していたが、現在の役所の縄張り争いや国家戦略の欠如を見ていると、わが国は、先人たちの失敗から何を学んだのかと思ってしまう。戦略がないので当然のことと言えるが、日本は国際競争力を失いつつある。今、日本の経済を支えている産業も、中国やインドの追い上げで、十年後にはどうなっているのかわからない。

そして、地球規模でみんなが豊かになり、世界的にも健康を求める時代になって、ヘルスケア・メディカルケアが将来の経済基盤となることは確実である。しかし、政治家が、「ゲノム医療が何故重要なのか」、「何をすべきなのか」を理解しているとも思えない。クリントンやオバマ大統領のような見識を持ち合わせた政治家が出てこないと、日本にとって危機的な状況が起こるだろう。いや、もうすでに、ウルトラマンなら赤色のランプが点滅している状況だ。

この最大の課題は、国の機関を代表する研究者たちが、ゲノム医療の全貌を理解していないことだ。この期に及んでも、自分たちの論文を書くための姑息な考えが優先されているようにしか見えない。国が、政治家が、官僚が、この人たちに意見を求めても、国の将来につながる気の利いたアイデアなど出てくるはずがないのは必然だ。

「ガダルカナル」を見て、今更ながら、英霊や多くの民間人の犠牲の上にこの国の現在があることを認識せざるを得なかった。「ガダルカナル島」では、多くの兵士が見捨てられたといっても過言ではない状況で、尊い命が失われた。日本という国の将来に思いを馳せながら、この国で、そして、日本から遠く離れた地で散っていった方々に対して恥ずかしくないのか、この国は!


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年8月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。