このところ横浜がカジノに正式に手をあげたことから、再びギャンブル依存症が注目を集めていますが、8月24日には「報道特集」でも取り上げられていたんですね。
その中で「ギャンブル依存症対策に力を入れているのが和歌山県」と報道したのには、ひっくり返って驚きました。
「遅れているのが・・・」の聞き間違いだとばかり思いました。
和歌山県は、ギャンブル依存症者に対して昔から本当に冷たい県です。
まず我々と連携を取ろうとしない。
そして、自助グループの受け皿が殆どない県で、相談電話が来ても途方に暮れてしまう県の一つです。
ギャンブラー当事者が参加する自助グループは、あれだけ広い面積をもつ和歌山県でたった2か所。
そして、ギャンブラーの家族が参加するギャマノンは県内にたった1カ所。それも月2回しか開かれていません。
これで一体どうやって、ギャンブル依存症者を救うのでしょうか?
しかも我々が家族会などの種をまいて社会資源を作ろう!と思っても、和歌山県は民間団体助成金「ゼロ回答」ですからね。
ゼロですよゼロ!
ろくに自助グループもなく、和歌山県のギャンブル依存症者の家族は、はるばる大阪まできているような状況なのに、地域の社会資源を育てようともしない。
どこがギャンブル依存症対策に力を入れているんですか!
そもそも報道特集で「ギャンブル依存症対策に力を入れているのが和歌山県」と報道されたゆえんは、「入場料6000円」「月の入場回数10回まで」のような国で決まっている依存症対策(実際にそれが依存症対策になるのかどうかは別として)以外に「IRカードを設けて一日で使える上限額を決めさせ、使い過ぎを防ぐ」というもの。
はぁ~~~~~~???????
そんなのどこのカジノ業者だって対策に掲げてんじゃん?
しかもですよ、自分で設定できるものなんだから、上限を変更しちゃえばそれまでじゃん?
設定変更できないとしてもですよ、カジノにハマっちゃったら、オンラインカジノだって闇カジノだってインカジだってあるご時世になんの歯止めになるの?
ねぇねぇねぇ、これで力入れてるってマジで言ってんの?
そもそも和歌山は、ギャンブル依存症対策に「ドレスコード」なんて掲げちゃうくらい、ギャンブル依存症には無知なんですよね。
こんなの「ギャンブル依存症者は貧乏人がなるんでしょ!」という偏見の塊じゃないですか。
いやいや金持ちだってはまるんだって!
大事なのは、依存症は「ダメ絶対」なんて言って、法律で「違法薬物」と指定していたって、罹患する人は沢山いるわけですから、入口対策をちょっとやった位で、防げるわけないってことなんですよ。
だから「なってしまった人をどうサポートするか。」「その社会資源を以下に増やしていくか」っていうことがとっても大事なんです。
今度、そのあたりのこと各県を評価し、レポート提出しますね。
昨日の報道特集、和歌山県が勘違いしているのか分かりませんが、「報道特集」はギャンブル依存症対策が最も遅れている和歌山県を、適当なうっす~い取材で、和歌山がさもギャンブル依存症対策が進んでいるかのような錯覚をおこさせて、これ大問題だと思いますよ。
いいですか「報道特集」さん。
ギャンブル依存症はものすごく人が死ぬんです。自殺率が高いんです。
和歌山県民を騙すような報道は罪ですよ。
自覚を持って下さいね。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト