世界的投資家ジム・ロジャーズが予言する日中韓の未来

南北朝鮮の統一もある

米国を代表する世界的投資家といえば、ジム・ロジャーズ、ジョージ・ソロス、ウオーレン・バフェットらです。その一人、ロジャーズの中国、南北朝鮮、ロシアなどについての長期的な見通し、さらにトランプ米大統領、安倍首相に対する評価は、日本で語られているのとは全く違う見解です。

ジム・ロジャース氏(Gage Skidmore/flickr=編集部)

これまで2度も世界一周の旅を敢行し、中国は3度、他の各国も訪ね歩き、自分の目で確認しながら情勢分析を続けてきました。国際情勢、マクロ経済政策、金融政策、社会トレンドなどを通して、超長期的な見通しを立てています。政治情勢、外交問題には深入りを避け、ファンダメンタル(地政学や経済の基本的条件)に従い、将来、どうなっているのかを予測する手法です。

投資家ですから、将来をどう読み、資産をどう運用すれば儲かるかに最大の関心を置きます。その国の政治体制に重大な欠陥があっても、それよりも経済的価値に傾斜した見方を重視します。ですから、日本からみると、受け入れがたい将来像の提示だと、不愉快に思う人も多いでしょう。

日本にいると、隣国である中国、南北朝鮮は、直面する外交、安全保障問題、政治体制の欠陥にどうしても目を奪われます。日韓関係はまさにそうでしょう。ロジャーズ氏は中国や北朝鮮も訪れて、各国の実情を自分の目で見つめてきました。日本で定点観測している人ほど、視野が狭くなる。視野広げるには、同氏がいうような見通しにも関心を持ち、そんな見方もあるのかと考えるのも一つです。

娘のためにシンガポールに移住

同氏はトランプ大統領の米国に失望し、さらに「21世紀は中国が最も重要な国、覇権国となる。アジアの時代がくる」との見通しに立ち、すでにシンガポールに居住地を移しています。その理由の一つは「娘の将来を考え、中国語を学ばせる。中国語の語学力とアジアでの経験は最上のスキルとなる」と。近刊の「日本への警告」(講談社アルファ新書)での指摘です。

「自分は中国を3度、車で横断した。表向きは共産主義を装う中国は、実にうまく資本主義を取り入れている。厳密な共産主義が敷かれていたのは、せいぜい30年程度。彼らには長い起業家精神の歴史がある」

「米国の8倍以上のエンジニアを毎年、輩出している。科学技術系の卒業生は中国470万人、米国56万人。市場競争では中国に勝てないと、保護主義のトランプは考えている」

とも、書いています。

日本論では「日本語しか話せなかったら、ビジネスチャンスを得られまい」と、指摘します。さらに「少子化、巨額の財政赤字、アベノミクスによる異常な金融緩和」を酷評します。円安で日本企業が息を吹き返したという見方に対しては「通貨切り下げが一国の経済を成長させたことは一度もない」と。

「少子化と国の長期債務の問題を抱える日本は、長期的には衰退する」

「18年秋に日本株を全て手放した。株であれ通貨であれ、日本に関連する資産は何も持っていない。日本経済を破壊するアベノミクスが続き、人口減少問題も解決できない限り、この判断を変えない」。

世界を見まわし、各国を歩いてきた投資家の目にはそう映る。日本中心の定点観測を続け、「日本は大丈夫」という識者の耳には痛い。

韓国が日本を超える将来

反日感情、反日政策を続ける不快な国の筆頭は、日本にとって韓国です。韓国について同氏は「韓国は日本よりも成功する見込みが高い。その理由は北朝鮮にある」と、意外な見通しを述べます。「北朝鮮の経済状況は世界の最下位といっていい。それが間もなく変わると、私は見る」。

「そんなバカな」というのも結構ですし、「世界的な投資家の目には、朝鮮問題はどう映っているのか」と、関心を持つのも必要です。同氏はこれまで2度、北朝鮮を訪れている。その理由は「着のみ着のまま、飢えた人が悲惨な生活を送っているとする情報の真偽を確かめたかった」。「意外なほど活気にあふれていた」と、同氏はみました。真偽のほどは私には分かりません。

さらに意外なのは「ドラスティックな変化が、今の北朝鮮に起きている。金正日が生きていたら、金正恩を処刑してもおかしくない」。これも私には「そんな変化が。本当かな」です。

それはともかく「朝鮮半島の南北統一が実現すれば、韓国は投資するに値する国に変貌する。もともと北朝鮮は資源が豊富で、韓国より裕福な国だった」。歴史の行方について、既成概念にとらわれてはいけない。

私の感想は、日本にいて、日本発か、韓国経由発か、米国発の情報に取り囲まれ、それで考え方が固まってしまいがちな日本人には、「不愉快だけれども、うーん、そんな見方、見通しもあるのだ」という柔軟な思考方法がやはり必要だということです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。