初入閣し環境相となった小泉進次郎氏の発言が物議を醸しています。原田義昭前環境相の発言を訂正し、「東京電力福島第一原発の処理済みの汚染水対策の所管は環境省でない」と発言します。
これに対して、日本維新の会の松井一郎代表は、「将来、総理を期待されている人が『所管外だ』とか、そういうことで難しい問題から批判をそらすようなのは非常に残念だ。真正面から受け止めてもらいたい」と指摘します。さらに、松井代表は汚染水受け入れについて「科学的根拠をもって、まったく自然界レベルのものを否定する必要があるのか」と受け入れの余地についても言及をします。
「所管外」にはどのような意味があるのでしょうか。まず「所管」について調べてみます。三省堂(大辞林第三版)では「権限をもって管理すること。また、その範囲」とされています。総務省行政管理局が運営する行政情報ポータルサイト「電子政府の総合窓口(e-Gov)」では「権限をもって管理する」所管法令および所管の法令が明示されています。省庁では「所管外」は「管轄外、担当外」という意味になるようです。
次に、小泉大臣は国会で「所管外」をどのような解釈で使用していたのでしょうか。最近の答弁を確認してみましょう。
※衆議院予算委員会(平成27年02月23日)の答弁になります。
○小泉政務官
足立委員とは、先ほど委員がおっしゃったとおり、何度も昨年の厚生労働委員会で、私の「所管外」の委員会でありましたが、お呼びいただいて議論をさせていただきました。
※参議院決算委員会(平成26年04月28日)の答弁になります。
○小泉政務官
これ、経営委員、大臣がおっしゃるとおり「所管外」ですからお答えすることは控えますが、東北地方の方だけが欠けていることではなくて、これは中国地方のブロックの方を見れば大分前からずっと入っていないんですよね。
本来の意味の「管轄外、担当外」として使用しています。小泉大臣は「軽々に所管外の者が発言することで、福島のみなさんを傷つけることはあってはならない」との発言もされています。「軽々に所管外の者が発言する」「福島のみなさんを傷つけることはあってはならない」は異なる文脈なので並列につなげるには無理があるように思います。
「所管外」という言葉は非常に誤解を与えやすい言葉です。大臣がこの言葉を口にしたらそれこそ誰も発言ができなくなります。所管外ですから。さらに、福島のみなさんを傷つけているのは処理水タンクが増え続けることではないでしょうか。
政治家が言葉を使い分けることは大切なスキルです。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。政治家の説明は具体的であることが望ましいと考えます。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。