皆さまは、エステの意味をご存じだろうか?エステはフランス語の「Esthétique」が語源で、エステと略称で呼ぶのは世界でも日本のみである。美の本質や美の価値について学ぶことの言葉として使われている。
今回は、『BMT-最上のゆるふわ筋肉』(みらいパブリッシング)を紹介したい。著者は、エステティシャンの小島千明さん。
■エステの本質とはなにか?
(小島さん)「首や肩、足に疲労が溜まると、誰かに押して欲しい! 揉んで欲しい!と思いますよね? 多くの女性が自分で採んだり、お店でほぐしてもらった経験があると思います。しかし、強いマッサージは、 その瞬間はとても気持ちょくスッキリしたような感じがするのですが、実は筋肉に強い力を加えると筋繊維が破壊されてしまうのです」
(同)「·強く押してもらったほうが効く、強く押してもらったほうが身体には良い。これは思い込みです。そしてこの思い込みはとても危険です。強いマッサージを続けるとどうなるのか?強いマッサージによって、本人は気付かないほどの細かい筋繊維が壊れます」
10年ほど前、筆者は仕事帰りに整骨院に寄るのが日課だった。首と肩を中心に、かなりの力をいれてゴリゴリやってもらった。とくに首のストレッチは念入りにお願いした。「力を抜いてくださいね・・・パキ!」。首のパキが日常の疲れを癒してくれた。ところがある朝、首が痛くて起きられなくなる。「体がゆがんでますね!」。また、パキをお願いした。
数日経っても痛みが引かないので、鍼治療にもいった。鍼気功の権威(自称)という方にも見てもらった。しかし痛みはとれず、日に日に悪化していった。にっちもさっちもいかなくなり、近所の整形外科でMRI検査をお願いした。頚椎にヘルニアができていた。数ヶ月、首を伸ばしてヘルニアを引っ込ませるストレッチをおこなった。
半年通院して治癒した。しかし、いまでも季節の変わり目には鈍痛がある。そのたびに首を伸ばすストレッチを受けにいっている。それ以来、こわくて整骨院には行っていない。美容院で肩のマッサージも断ってしまう。首のパキの代償は想像以上に大きかった。10年前に読んでおきたかった本である。
(小島さん)「人には自然治癒力があるので、この壊れた筋肉を治そうとします。その時、ただ普通に戻るのではなく、前よりも刺激に耐えられる強い筋肉になろうとするのです。その結果、刺激に強い筋肉になって元に戻ります。ですので、以前の強さでは物足りなくなり、『もっと強く押して下さい』という負のループにはまっていくのです」
(同)「これを繰り返したお客様の身体は触ればすぐに分かります。ガチガチなのです。わざわざお金を払って、もしくは自分で自分の身体を壊してしまっては本末転倒です」
本書では、エステティシャンである著者がお客様のトラブルを解消するため、美容整骨師のダブルライセンスを取得し、さらに現場の事例に向き合う中で筋肉に特化したアプローチを開発していった過程が描かれている。
■費用対効果のバランスがとれている
天地を切ったスマートサイズに適度なボリューム感。しかも価格は1000円(税別)。このクオリティでこの価格を実現するには版元のかなりの努力が必要だったように思う。みらいパブリッシングは親しい出版社の一つだが、松崎社長渾身の一冊だと拝察した。
本書はビジネス書や実用書とは少々異なる。企業出版の場合、宣伝職が強すぎて読むに堪えられないものが多いが、本書は読者目線で丁寧に構成されている。
[本書の評価]★★★(78点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満
※2019年に紹介した書籍一覧
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※14冊目の著書『3行で人を動かす文章術』(WAVE出版)を出版しました。