韓国の内憂外患、文大統領の向かうところ

久しぶりに「なでしこアクション」の山本優美子氏と交信しました。「カナダで慰安婦問題は出ていませんか、何か不審な動きはありませんか」ということでした。彼女は映画「主戦場」で係争中のようですが、その話はしませんでした。「なでしこアクション」という機動力を持っているという点で櫻井よしこさんとはまた別の強みがあります。また日本第一級の韓国研究学者との付き合いも深く、学者先生らが彼女の活動内容に大変興味を持っています。私も彼女も参加する学者の集まりに招聘されたこともありますが、大変しっかりと日本のことを考えてくれています。

今のところ、カナダでは慰安婦像の問題は収まっており、水面下での動きも見られません。一つは韓国が国内問題でそれどころではないこと、もう一つは同様の人権問題として話題になったカナダでの「南京大虐殺記念日制定」も立ち消えになったことがその最大の理由です。南京問題がなぜ、立ち消えになったかですが、一つには安倍首相と習近平国家主席の昨年秋の会談で180度方向転換されたことはほぼ間違いありません。これは活動の最前線にいた私の肌感覚ですが、まさに「あの時を境に」という感じでした。

もう一つはカナダで南京問題の旗振りであった香港系の議員や活動家が香港での民主化問題に直面し、日本の大昔のことに構っていられない状況になったことも手助けしています。同様に韓国も確かについ数か月ほど前までは対日問題で大爆発していましたが、不思議と慰安婦問題など歴史問題への追及はあまりなかったと言えます。理由はそれ以外の事象に目線が移ってしまったからであります。つまり、韓国内の歴史問題の優先度が下がり、そこから目を遠ざけさせる事案があれば火の粉はかかってこないということになります。

文在寅大統領(韓国大統領府FBから:編集部)

文在寅大統領(韓国大統領府FBから:編集部)

ご承知の通り、韓国では目線は対日通商問題から韓国国内問題になってきます。チョ長官(法務大臣)の任命問題であります。なぜ、韓国でこれがここまで問題になり、文大統領は政治生命に影響を及ぼすかもしれないリスクをとってまでチョ長官を指名したのでしょうか?

これは韓国の検察制度そのものに問題があるとみています。韓国は検察の下に警察機構があります。つまり、検察は警察力を支配する圧倒的権力を保持していると言ってよいのです。それを改革しなくてはいけない、と文大統領は以前から公約のごとく主張していたわけです。ちなみに韓国の大統領も圧倒的権力を持っており、ある意味、今回の戦いは権力者同士の頂上決戦のようなものにも見えるのです。

それでも政治生命を賭けるほどなのでしょうか?私の考えは文大統領の自分の大統領任期終了後のことを考えたのではないか、と疑っています。つまり、韓国では大統領経験者はほぼ逮捕されるか、自殺するといった異様な末路を辿るその背景に検察力があると考え、その解体的体制変換を図ることで自らの将来の地位を確保するとすればどうでしょうか?

ではなぜ、チョ長官なのか、といえば、彼のようにグレーであるがゆえに世論を巻き込みやすく、検察組織の異常さを国民に広く知ってもらうという作戦だとしたらどうでしょうか?一歩間違えればアウトのきわどい勝負ですが、文大統領はそこまで追い詰められているとも言えます。そしてチョ長官は文大統領にうまく利用されているのではないでしょうか?

韓国の内憂外患という点に関して言えばぱっと思いつくだけでも10やそこらの重要案件リストが思い浮かびます。徴用工問題も一向に返事ができないのはもちろん、韓国側にとって回答できない根本的問題があることと他の案件でそれどころではなく、政権を維持することすら危うい状態にあるからとみています。

北朝鮮はこの状態をニヤニヤしながら見ていると思います。一方、日韓問題は二階幹事長が「日本が譲歩できることは譲歩を」と述べていると報じられています。これをどうとるか、ですが、その際、二階さんが安倍首相の4選もある、と述べていることから韓国に対し、日本の姿勢は今後も変わらない、一方、日韓が冷戦状態になることは将来の東アジアの経済、安全保障上望ましくない、と含み置いた上での懐柔案にあるとみています。強硬派からは「何を言うのか、二階さん」ということかと思いますが、韓国が崩壊されても困る、という危機感とも取れなくはありません。

韓国は経済状態が非常に悪化しており、97年危機の再来もあるとみる向きもあります。左派政権が民主主義を強く前面に出すことで政策のブレが生じ、経済は下向きになりやすいことを改めて確認したように感じます。韓国が普通の状態に戻るには何はともあれ、経済の立て直しです。そして若年層の失業率を改善させるよう、企業活動を活発化する対策を練ることが第一義でありましょう。回復にはうまくいっても5-6年かかる気がします。

韓国では反文政権の大規模なデモが行われました。文大統領には確実により強い向かい風が吹くことでしょう。国内の混乱の行方が懸念されるところです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年10月4日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。