デジタル手続き法の骨抜きを許すな

2019年通常国会でデジタル手続き法が成立した。行政手続きはデジタルを基本として、書面は例外とするというのがこの法律の根幹である。

例外についてデジタル手続き法は次のように定めている。

処分通知等を受ける者について対面により本人確認をするべき事情がある場合、処分通知等に係る書面等のうちにその原本を交付する必要があるものがある場合その他の当該処分通知等のうちに第一項の電子情報処理組織を使用する方法により行うことが困難又は著しく不適当と認められる部分がある場合として主務省令で定める場合には、主務省令で定めるところにより、当該処分通知等のうち当該部分以外の部分につき、前各項の規定を適用する。

「困難又は著しく不適当と認められる部分がある場合として主務省令で定める場合」とはどのような場合だろうか。

総務省は、他府省も代表して、「行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則の一部改正案」について意見を募集しているそこには次の記述がある

  • 申請等をする者について対面により本人確認をする必要があると当該申請等が行われるべき行政機関等が認める場合
  • 申請等に係る書面等のうちにその原本を確認する必要があるものがあると当該申請等が行われるべき行政機関等が認める場合

法律は本人確認と原本交付が必要な手続きのうちデジタル化が困難又は著しく不適当と認められる場合と言っている。これに対して、総務省案は本人確認と原本交付が必要な手続きのうち各府省が例外と認める場合は、デジタル化の対象から外すという。

総務省案には二つの問題がある。一つはトートロジー(同語反復)。この案は、「本人確認がどうしても必要な場合とは、本人確認が必要な場合である」と言っているに過ぎない。

第二は現状追認。一つひとつ行政手続きを精査して例外とせざるを得ないと評価した場合には主務省令によって公表するというのが、法律が期待する活動である。「主務省令で定めるところ」がこの法律施行規則の改正で済まされるとなると、各省庁任せでの現状追認とも読めてしまう。

これではデジタル手続き法は骨抜きになる。意見募集の期限は11月8日。できる限り多く反対意見が提出されるように期待する。