きのう(10月23日)は森ゆうこ氏の問題で、メディア活動にいそしんだ日となった。
まずは言論アリーナの緊急生放送を行い、池田信夫・アゴラ研究所所長と宇佐美典也くんとで、ここまでの現状について30分討論した(動画はそのまま録画でご覧になれます)。
そしてこの放送を終え、池田所長と永田町へ急行。原英史さんに対する森氏の誹謗中傷を糾弾する署名活動について、原さんが記者会見を行うということで、賛同人として出席した。広報の裏方として取材される側の経験はあるが、会見に登壇するのは初めてなので少し落ち着けなかった。
さて記者会見。原さんからはこれまでアゴラで書かれていることを改めて強調された。この問題を精力的に取材している産経新聞は、早速夜のうちに報じてくれた。
ただ、案の定、一緒に出席した賛同人(昨日は15人のうち、新田と池田所長、岸博幸さん、加藤康之さん)のコメントは未掲載だった。一応、こちらで述べたポイントだけ書いておくと、私や池田からは、原さんの問題の根源は、野党が日程闘争に明け暮れる国会の改革と、役所の皆さんをブラック労働から解放するといった全体のパッケージの中で捉えるべきだと強調。ツイッター告発をスルーしているマスコミ報道もしっかり本質を報道してほしいとお願いした次第だった。
そして私からはアゴラで展開中の現職官僚の皆さんからの意見募集の取り組みと、各応募者たちとやりとりから悲痛な思いが伝わってくることをアピールした。
国民民主党に新たな「ク○バ○ア」が出現
少しでも事態が好転してほしいという思いを持ちながら帰路についたところ、移動中にみたニュースに激怒せざるを得なかった。森ゆうこ氏に加え、国民民主党に新たな「ク○バ○ア」が出現したように感じた。
同党参院幹事長を務める舟山康江氏がこの日の記者会見で、森氏の質問通告遅れを告発したアカウントを特定すべきだという認識を示したというのだ。
アカウント特定の正当性強調 国民幹部 森氏質問通告(産経新聞)
正直、ショックは小さくなかった。言論アリーナの放送に入る直前、政治ジャーナリストの安積明子さんがツイッターで、この日行われた玉木代表の記者会見のほうでは、“犯人捜し”はもうしないという見解が出たと速報していたからだ。
玉木会見で確認。森議員の質問通告事件は官僚の働き方改革問題と参考人の守秘義務をどう規定するかが今後の論点。“犯人捜し”は行われていないし、その予定もなし。
— 会館の美女★フリーランスのあづみです (@main_streamz) 2019年10月23日
舟山氏は、官僚のものとみられるアカウントが質問通告の遅れを告発したことについて、「公益性のある内部告発とは全く種類が違う」との見解を示したというから呆れる。そもそも国会質問の内容は隠すものではないし、本人も11日20:22分の時点で項目はツイートしている。
それどころか、ネットで指摘されているように、森氏は2012年7月、役所の職員に内部告発を奨励していたわけだから、これはダブスタと言われても仕方があるまい。
@isikawakinrokyo 今日の予算委の質問は自分では30点です。これだけ証拠を突きつけても、TVの前で平気で嘘をつき続ける人たちを追い詰めるのはむづかしい。
でも、現場の検事さんや法務省の心ある官僚たちは何とかしたいと思っています。
求む!内部告発。— 参議院議員森ゆうこ (@moriyukogiin) 2012年7月24日
舟山氏がどう思っているかは知らないが、官僚たちがそもそも怒っているのは、質問の差し替えが行われたことで台風襲来直前の深夜まで待機を余儀なくされるなど、政局ありきで職員の生活者としての権利を侵害したからにほかならない。
舟山氏の略歴をみて唖然としたのは、この人は元農水官僚なのだ。彼女のHPによれば本省の経済局国際部などで勤務経験があるから国会待機の不毛さは百も承知だ。森氏が炎上した根底の問題に目を背けて、ダブスタの告発者特定を要求するなど白々しい。
そもそも政治家としてあまりに視野狭窄で稚拙だ。深夜までの待機で役所の職員をうんざりさせたのは事実なわけだから、もし自民党や役所側に犯人探しを呑ませて、実現してしまった場合、霞が関の職員をわざわざ敵に回すことになる。これで政権交代をめざすなどと言うのは笑止千万だ。
そういえば、国民民主党には他にも役所出身で、森氏のかたを持つ議員がいた。旧郵政省出身の奥野総一郎氏だ。奥野氏もブログで、内閣府が通告書を送った原さんを通じて関係者に連絡が行ったことを問題視し、「政府から委嘱する民間有識者にも守秘義務及び罰則を課すべき」とも言う。そんなことをすれば、政府に協力する有識者は激減してしまうだろう。
奥野氏もまた目の前の法的な根拠にこだわり、最終的な政治的効果が眼中にないのだ。しかもこのブログ、最後に突然、役所の待機に詫びを入れており、もう支離滅裂だ。
党のガバナンスに疑問。良識派は“バカ”と離縁を
先日の安積さんの記事によれば、森氏が原口氏らと「情報漏洩」をぶち上げた16日の記者会見は、玉木代表も事前に把握していなかったとされる。加えて、昨日の舟山氏と玉木さんの告発者特定をめぐる認識の差異。国民民主党のガバナンスがおかしくなっているという疑念をあらためて懐かざるを得ない。
筆者は先日も書いたように、すでに森氏らのせいで野党再建を見限った。だから、こうした“政治的バカ”の集まりに過ぎない国民民主党などにつける薬はないと思う。別に自民党支持者でもないが、安倍首相がさっさと年内に解散総選挙を断行して木っ端微塵にしてもらいたいと心から願いさえしている。
しかし、玉木さん、岸本周平さん、前原さん、大塚耕平さんなどの「良識派」があまりに気の毒に思う。少なくとも安倍政権下での政権奪取はあり得ないわけだから、良識派の皆さんは、森氏の後ろに控える小沢氏を含めて今回の騒動で可視化されたバカどもと離縁し、自民公明と連立をとっとと組んで、憲法改正に協力、ポスト安倍時代の政界流動化を待ちながら息を潜めてはどうか。
新田 哲史 アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長
読売新聞記者、PR会社を経て2013年独立。大手から中小企業、政党、政治家の広報PRプロジェクトに参画。2015年秋、アゴラ編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。Twitter「@TetsuNitta」