今週のメルマガ前半部の紹介です。先日出された以下の記事は要注目です。
【参考リンク】「終身雇用難しい」発言の舞台裏 トヨタ社長が焦るワケ
トヨタといえば、多くの企業が成果主義にかじを切る中「年功序列と終身雇用こそがモノづくりの屋台骨」と従来のスタンスを堅持し続け、日本型雇用礼賛の経営学者の最後の砦となっていた会社です。
そのトヨタのトップが春闘でああだこうだと煮え切らない交渉を続ける労使に対し「いつまで重箱の隅をつつくようなことやってんだ」と一喝したという話ですね。時流の変化をひしひしと感じます。
というわけで今回は今起こりつつある“変化”についてまとめておきましょう。
先送りのツケが一気に表面化
「年功序列を維持するには組織がずっと拡大しポストも若手も毎年増え続けないといけないけどそんなことは不可能、はやく日本企業は年功序列と終身雇用を見直すべきだ」
というような話を筆者は10年以上前からし続けてきたわけですが、一向にその気配はなかったんですね。
それが昨年あたりから急激に変化が起き始めています。各行で3万人超の人員削減を発表したメガバンク、数千人規模の配置転換と早期退職を募集中の大手電機、そして4千人の営業スタッフを買収した介護事業に配置転換させる損保ジャパン……etc
最近だと2018年度決算で最高益を記録しながら早期退職を募集するキリンも話題です。
アプローチは様々ですが、上記の動きにはある共通点があります。それは“脱・年功序列”という点です。ベテランに退職を促す早期退職募集は言うまでもなく、異業種に移したうえで年功賃金をカットする配転も年功序列の否定なわけで、事実上の脱・終身雇用と言っていいでしょう。
というと「終身雇用そのものは残るのでは?」と思う人もいるでしょうが、しがみつくメリットがなくなるわけですから少なくない数の人が自発的に離職するはずです。実際、5千人の配置転換を進めた某社では4割近い対象者が離職したとのこと。
同様の組織改革案は多くの大手企業でも計画されており、今後は大手企業の中高年社員の間で一定の流動化が進むはずです。まさに100年に一度の大転換期と言ってもいいと思いますね。
それにしても、なぜ今なんでしょうか。やはり直接的には今年6月に、政府が「70歳までの雇用確保を企業の努力義務とすること」を成長戦略案に明記したことが大きいです。
ただでさえ頭数が多いバブル世代を70歳まで雇用するなんて冗談じゃないと慌てた企業が続出したわけです。「あくまで努力目標だ」と言われても大手は実行しないと徹底的にいじめられますから。
でも本質的な原因は、すべてを先送りし続けてきた日本社会の姿勢そのものにあるような気がしますね。
(年金給付の見直しや高齢者の医療費自己負担の引き上げといった)社会保障改革はイヤ、解雇規制緩和による労働市場流動化もイヤ、定年後に年金受給開始までブランクがあくのもイヤ、とにかく痛いのはすべてイヤイヤイヤ!と国民が言い続けてきた結果、気が付いたら年金支給開始もリタイヤ年齢も70歳が議論され、慌てた企業がいっせいに50代の切り捨てに走り始めたわけです。
歴史にifはありませんが、たとえば10年くらい前に正社員を解雇しやすくしたり社会保障改革を実現していればどうだったでしょうか。40代でクビになったとしてもまだまだ若いからなんとでもなるし(解雇しやすい=採用しやすいということなので)採用ハードルもぐんと低く新たなフィールドで再チャレンジも容易だったでしょう。
年金支給も65歳がキープできていれば、企業も安心して中高年を再雇用しやすかったはず。そういう恵まれた雇用環境の中で、それまで培った経験を活かし、天職と呼べるような第二のキャリアに巡り合える中高年も大勢産まれていたような気がします。
一方、いま50代で放り出された中高年に、ガチガチの正社員保護が健在かつ70歳雇用義務が明記された現状で、なかなか企業は手を出しづらい気がします。運よく会社に残れたとしても、会社から与えられる仕事に否応なく70歳まで付き合わないといけないわけです。これは彼らが望んだ未来なんでしょうかね?
とはいえこういう状況が出現してしまった以上、まだ時間のある40代以下の世代は自力で対処していくしかありません。
以降、
人事制度改革でコケる会社の共通点
成功する人事制度改革はコレだ
Q:「いつのまにか自己研鑽をやめていました」
→A:「プロフェッショナルへの道は常に開かれています」
Q:「なぜ連合は社会保険料の高騰を黙ってみてるんでしょうか?」
→A:「目立たないようにちょこちょこ釘はさしてますけどね……」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年10月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。