松川るい議員が国会質疑に登場し、良い仕事をされたので注目したい。それは10月16日に行われた参議院予算委員会で、茂木大臣との質疑においてなされた提案だった。
茂木外務大臣との質疑
まずはその質疑を確認する。
松川るい議員:世論戦について(略)旭日旗についてお伺いしたいと存じます。韓国の国会があろうことか「東京オリンピックパラリンピックに旭日旗持込を禁止する」という国会決議を可決されたというニュースを見ました。「他国の正式な旗にケチをつける」と言う決議を出すという事は傲慢もいいところではないかと思うわけでございます。まず、そもそも旭日旗に関する韓国が繰り広げている世論戦、これに対しては日本政府としてはどのように対応されているのか、茂木大臣にお伺い致します。
茂木大臣:旭日旗のデザイン、これ「日の出」であったりとか「旭」をイメージしたものでありまして、(略)類似のデザイン、海外でもよく見るのですよ。(略)旗の掲示が政治的宣伝になるとは考えておりません。そして同時に組織委員会も同じような見解であると、このように承知を致しております。こうした我が国の考え方、韓国含め国際社会に向けて、累次の機会に説明してきておりまして、今後ともしっかり説明を続けて行きたいと思っております。
要するに茂木大臣(政府)は「前動続行」という説明をしている。しかしそれは効果がある行動の場合には有効で、旭日旗問題は従来のやり方では効果がなかったのだが…。
松川議員:ありがとうございます。このパネルにある外務省ホームページ(筆者注:旭日旗説明ウェブサイト)良く出来ている。ただクリックしないと開かないとか、英語版と日本語版はあるが韓国語がないと。もう少し、韓国の方にも分かるように、韓国語版の作成とか、ビジュアルにパッと見えるように、アクセスし易い、見易い形で提示をして頂くことに改善頂けないでしょうか。大臣にお伺いします
茂木大臣:今のご意見受けまして、前向きに検討させて頂きたいと思います。
(以上、参議院予算委員会 2019年10月16日(水) に関する動画(2:50:50~)より筆者文字起こし、語調を整える発語等省略。太字は筆者)
評価したい2つのポイント
良い点1:上司に諫言
質疑相手の茂木大臣といえば、1993年から衆議院議員を務め大臣も歴任しているベテランだ。いわば圧倒的な「上司」のような相手と対峙し1期目の議員としてはやや緊張もしたのであろう。映像からは初々しさも感じる質疑だったが、日本にとって大切な提案をストレートにぶつけていたことは高く評価すべきである。
良い点2:盲点を突いた提案
旭日旗に関する正しい知識について、日本国民自身も正確な知識を持つべきなのは勿論であるが、俄かに国際問題となっている現在、最も知って欲しいのは韓国の国民である。従って、旭日旗に関する説明も韓国人が理解できるよう、韓国語版は当然必要であるのに今までなかったのは確かに片手落ちだった。
外交官としての経験を持つ一方、行政府の官僚としてではなく政治家として国会に参加し、討論の主体として政府に指摘できる人材はそう多くないはずで、今回の提案は「良い仕事」だった。国民の一人として感謝申し上げたい。
外務省も迅速に対応
この松川議員の国会での要求に茂木大臣は約束通り迅速に検討したと思われる。日経新聞は以下の通り報道していた。
「旭日旗の説明は韓国語で 外務省、HPに資料掲載」
外務省はホームページ(HP)に掲載されている旭日旗の説明資料に韓国語版を追加する方針だ。現状は日本語版と英語版にとどまっている。フランス語、スペイン語などでの発信も検討する。16日の参院予算委員会で自民党の松川るい氏が韓国語版の作成を求め、茂木敏充外相が検討する意向を示した。 (日本経済新聞 電子版2019/10/22より引用)
この動きは確かに外務省のウェブサイトでも確認が取れた。
大鷹外務報道官会見記録
(令和元年10月23日(水曜日)15時35分 於:本省会見室)
ホームページにおける旭日旗説明の韓国語版作成
【読売新聞 後藤記者】先日国会で、外務省のホームぺージでの旭日旗の説明について、韓国語版で掲載することについて 茂木大臣が検討したいというお話があったと思うんですが、実際の検討状況を教えていただきたいのですが。
【大鷹外務報道官】ご指摘の資料の韓国語版作成、それから資料へのアクセス改善など、いろいろ旭日旗に関する対外発信のあり方については、ご指摘のとおり10月16日に茂木外務大臣が答弁したとおりでありまして、それについては今、前向きに検討を進めているところとお考えください。
(外務省ウェブサイトより引用)
これらの対応に対して、松川議員も自身のツイッターで謝意を示していた。
以前から松川議員は対韓政策に貢献していた
松川議員といえば、韓国のGSOMIA破棄を受け、8月23日及び30日に、対韓政策に関して今後の展望と日本のとるべき方針に関してアゴラにも記事が掲載されていた。外交官出身であり日中韓協力事務局次長としてもご活躍された経験に基づく論考はさすがに鋭く、例えば「文在寅大統領が来年の国会議員選挙で大勝利するような事態は是非さけるべきである」(アゴラ8月23日「GSOMIA破棄:文在寅「革命」は韓国をどこに連れていくのか①」より)といった示唆は一般のメディア情報からは得られない視点を提供してくれている。
また、外国特派員協会で7月24日に行われた「ホワイト国除外」に関する記者会見では、韓国側の李泳采教授が会見趣旨を都合よく歪めようとするところ、松川議員が冒頭でしっかりと会見趣旨の確認を行い、頼もしい主張を展開していた。
なお、英語の弁も立つことは、会見動画からも見て取れるが、慎重を期してか会見では日本語も話していたことは印象的だった。(詳細はかきLee and Matsukawa: “Possible solutions to the Japan-South Korea crisis”ご参照)
将来が楽しみな人材
外務官僚だった識見も輝く「即戦力」感あふれる松川議員だが、良い人材だけに人格攻撃や政局のための駆け引きには十分気を付け、自民党には大切に育成して頂きたい。
ロビー活動や宣伝戦では日本より力がある韓国は、現在の外相に通訳出身者をあてている。そのため確かに英語の発言自体は達者だが、政治家としての知識と経験が不足しているのか、議論の中身はやや弱い印象もあり、決して弱点がないわけではない。
一方、松川議員には語学力と外交官としての経験が既にある。これらに加え今後、政治家としてまた与党の一員としての経験を積むことによって、日本の国益に貢献する本格派の政治家になるだろう。
今国会も荒々しい風景が広がり始めたが、こういう良い点こそ見逃さないようにしたい。
田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。