米10月雇用統計は、こちらでご紹介したように清々しい秋晴れのような結果でしたよね。お陰様で、米中貿易協議 の第 1弾合意への楽観的な見方とともに、米株 相場を最高値へ押し上げたものです。
下院で弾劾調査が本格化するなか、トランプ大統領がこの機会を捉えて有権者にアピールしないはずはなく。 米10月雇用統計発表当日にホワイトハウスがリリースした声明のタイトルは「歴史的に好調な労働市場が継続、黒人の失業率は過去最低を更新」。 黒人の失業率が5.4%と記録を塗り替え、トランプ政権が発足してから2.7%ポイントも低下したと強調していました。他にも労働参加率の改善のほか、全米50州のうち24州で失業率が過去最低を更新したかそれに並ぶ水準だった実績を主張しつつ、声明のタイトルには黒人の失業率を取り上げたわけです。
2020年の米大統領選へ向け、黒人有権者に訴求しようとしたのでしょうか?少なくとも、一部の黒人はトランプ政権で恩恵を政策運営を評価しています。
今回NYへ出掛け、サンダース支持者、ウォーレン支持者、アジア系を中心としたヤン支持者などと意見交換することができました。その中で、最も興味深かったのは黒人のトランプ支持者です。彼らは、以下の2点でトランプ大統領を絶賛していました。
1)黒人の労働環境は かつてないほど良好
例 ①:今まで貯金した試しはなかったが、安定した雇用と賃上げを支えに2年で一軒家を購入できるまでになった(筆者注:ペンシルベニア州の田舎で、1.5万ドルの住宅)。
例②:5年前までは家賃が払えず友人の家を転々としていたものの、2017年に不動産エージェントとして働き始めてから成功し、昨年に自身の 不動産仲介会社を立ち上げた。
2)シリア撤退は英断
意見①:シリアに従軍した親戚がいるが、なぜ米国人の血を流さなければならないのか理解できない。
意見②:米軍は、終わりのない紛争に疲弊しきっている。トランプ大統領は兵士にとって最良の決断をした。 トランプ氏は米国の大統領であって、世界の大統領ではない(筆者注:トランプ氏もそんな発言を展開していました)。
意見③: シリア撤退をめぐる世論調査の結果は真っ二つだが、 駐留を続けて財政赤字が増え、 その上で仮に中間所得向けの減税策やインフラ計画を講じるとし、その資金は一体どこから出てくるというのか。
※シリア撤退につき、中東専門家の方からこんなご意見を頂戴しました。
「そもそも米軍はIS退治にクルドを使っただけであって、クルドを助けにシリアに行ったわけではありません。これを決断したのはオバマで、ISより強ければ誰だでも良かった訳ですが、当初頼りにした自由シリア軍(FSA)はあまりにだらしなくて使い物にならず、しかし強いからと言って別のイスラム過激派を使う訳にもいかず、はたまたイラン革命防衛隊やヒズボラは論外なので、消去法的にコバネ攻防戦で名を挙げたクルドに目を付けたというのが実態です」
個人的には、 かつて家賃を払えないほど困窮した友人の話に感銘を受けました。アメリカン・ドリームよろしく、自分の会社を立ち上げただけでなく、8人の部下を雇用できるほど成功したとは…大いなる衝撃と刺激を受けました。 トランプ大統領は「悲しいことに、アメリカン・ドリームは死んだ」と発言していましたが、景気拡大期でチャンスをつかむのは「為せば成る」精神なのでしょうね。
ちなみに、カバー写真は初優勝を果たしホワイトハウスに招待されたワシントン・ナショナルズの選手です。NBAのスター選手、ステフィン・カリー選手がNBAを制覇した当時、ホワイトハウス訪問を固辞しましたっけ。ナショナル・ジャーナルがかつてバスケットボールがリベラルでメジャーリーグが保守寄りと紹介していましたが、やはり傾向として間違っていないようです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。