先月10月22日、日本人初の国連難民高等弁務官を10年間務めた緒方貞子さんが92歳でお亡くなりになりました。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
日本人女性が国連機関のトップを務めた事がよく知られていますけれども、私はその肩書きよりも防弾チョッキを着て、世界の難民現場に出向いて素早い決断する姿が、「本当にすごいこと、すごい人だな」と思って尊敬の念を寄せていました。
1991年、米ソ冷戦構造で米ソの覇権争い、そして良くも悪くも世界が米ソの管理下にありましたが、米ソ冷戦時代が終わり民族・地域紛争が増えていった時期に緒方さんは国連難民高等弁務官に就任されました。
1979年のアフガニスタン紛争で発生したアフガン難民、1991年の湾岸戦争停戦後のイラク紛争によって発生したクルド難民、1992年のユーゴスラビア紛争で発生したボスニア難民、1994年のルワンダ内戦で発生したルワンダ難民など各地で数百万人規模の難民が発生しました。そうした中で緒方さんは国連機関のトップとして命を救うために奔走していたわけです。
さて、国連に対して日本は2億3880万ドル(2019)を拠出しています。国連分担金の拠出額1位はアメリカ、2位は中国、3位は日本で、日本の拠出額のの割合は全体の8.56%です。
国連分担金負担割合(額)
1 アメリカ合衆国 22.000% 6億7,420万ドル
2 中華人民共和国 12.005% 3億3,470万ドル
3 日本 8.564% 2億3,880万ドル
4 ドイツ 6.090% 1億6,980万ドル
5 英国. 4.567%. 1億2,730万ドル
これに対して国連の職員数を見てみると、1位がアメリカで5274人、2位がフランス人で4332人、日本人は1071人で25位、全体の2.5%程度です。
国連機関で働く各国の職員数(現地採用含む)
1位 アメリカ 5,274人
2位 フランス 4,332人
3位 スーダン 3,630人
23位 中国 1,114人
25位 日本 1,071人
はっきり言って分担金に比べて、職員の割合が少な過ぎると思います。これは国連機関に限らず、国際機関で働く日本人がまだまだ少ない状況です。やはり、世界貢献する日本人が増えてほしいという純粋な理由と、もう一つは外交上重要だということです。「外交上、職員数が多ければ国益につながるから日本人が多いほうがいい」というのは、日本人職員が多くいればそれだけ情報を先に手に入れることができ、政府とのやりとりもスムーズに行えることから国益に繋がります。裏を返せば職員数が少ないということを国益を損ねているわけです。例えば日本政府の方針が国連内部で阻止されることもあるんです。
さて、私はありがたいことに緒方さんに何度かお目にかかっる機会がありました。その中の1回、平成21年の9月に目の前にいる緒方さんから聞いた言葉、今でもよく覚えています。世界経済フォーラムのジャパンミーティングに私は参加をしていました。その日はディスカッションリーダーを私が務めていましたのでメモも残っています。
「経済成長していって、日本国民みんなが必死だった頃と比べて、暗中の時代に生きてきた結果、人が内向きになった」と緒方さんは言っているんですね。
是非、これからの日本は若い人の中からどんどん世界に目を向け世界に出ていく人が増えてほしいものです。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年11月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。