こんばんは、東京都議会議員(町田市選出)のおくざわ高広です。
昨日は、オリンピック・パラリンピック特別委員会が開催され、マラソン・競歩の会場変更に関する質疑が行われました。
会場変更の経緯をざっと振り返ってみると、
・9/27 ドーハの世界陸上女子マラソンでリタイアが続出(酷暑が原因との見方)
・10/11 IOCから組織委員会にマラソン・競歩会場を札幌へ変更する打診(札幌案を提案することが決定)
・10/15 IOCから東京都に会場変更案が伝えられる
・10/16 IOCから会場変更案が公式に発表される
・10/31~11/1 IOC、組織委員会、東京都、国の四者で、その是非が議論される
・11/1 四者協議において、マラソン・競歩の札幌開催と議論の到達点としての4項目が示される。
なお、4項目とは以下。
- 「会場変更にかかる最終的な決定権限はIOCにあること」
- 「マラソン・競歩の会場が札幌に変更された場合でも、発生する新たな経費は、東京都に負担させないこと」
- 「既に東京都が支出したマラソン・競歩に関連する経費については、十分に精査・検証の上、東京都において別の目的に活用できないものは、東京都に負担させないこと」
- 「マラソン・競歩以外の競技について、今後、会場を変更しないこと」
・11/8 都議会オリンピックパラリンピック特別委員会(←今日の内容はここです)
さて、私の質疑はどういったものであったかというと、これから始まる様々な議論の出発点を確かめることでした。ブログ「大いなる合意」でも書いた通り、都にとっては厳しい状況の中、4項目について意見が一致したことは大変重要だと捉えています。
しかし、四者協議の議事録をみると、IOC、組織委員会、国は「合意した(意見が一致した)」と述べているのに対し、都は「確認した(たしかめた)」と言っており、考えに隔たりがあるように感じます。この言葉の違いを逆手に取られ、今後の協議が不利に進むようなことがあってはならないという意図から、意見の一致をみたのかという点を重ねて問いました。
議事録が出ていないのでまだ正確な言葉は確認できないのですが、「合意の前提条件として4項目を確認した」という、曖昧な答えが返ってきており、やはり不安が残るものでした。そもそも今回の会場変更に従わざるを得なかったのは、過去に結んだ契約によるものです。IOCと開催都市の関係は信頼に基づくものであると同時に、お互いの利害の一致点を探る外交交渉のようなものですから、重要な岐路においては、一言一句において示し合わせ、できれば書面を交わすことが必須です。
追加負担を都が行わないという確認はしたものの、誰が負担するかは決まっていない。都への補償が出た場合にどういった処理方法で支払うのか決まっていない…など、4項目から派生する具体的な内容の協議は今後ということになります。
その出発点について、改めて四者の認識が同じであることを確認するとともに、今後の協議ではその都度書面で確認していくことを求めました。(なお、都が答弁で根拠とした書面は、四者協議で机上配布されたものであり、四者がサインをした契約書のような類のものではありません。)
加えて、もう一点。私から伝えたかったのは、東京2020大会の成功とは何か、という原点に立ち返るべきであるということです。
「2020年に向けた東京都の取組-大会後のレガシーを見据えて」では、「東京に」「日本へ」「そして世界へ向けて」という3つの視点が述べられています。日本の首都である東京が、大会を通じてどのようなメッセージを発信していくのか、その一挙手一投足に世界の目が集まっています。
今回の決定は、マラソンや競歩を楽しみにしていた多くの都民にとって、ぽっかりと胸に穴が開くような出来事です。私にとっても、亡くなった父が陸上に命を捧げたような人でしたから、昨日の質疑でも胸が詰まるような瞬間もありました。しかし、この喪失感を負のエネルギーに変えてしまっては、本当の意味での大会の成功は訪れないと思うのです。
公明党の質問でパラマラソンを盛り上げるべしと取り上げていたので、なぜですかと聞いてみたところ「会場変更が決まった以上、暗い話題ばかりではだめだろう。パラマラソンの素晴らしさを伝えて、大会を盛り上げる議論をしたほうが有意義じゃないか」とのことでした。
昨日の委員会では、ある発言を巡って委員会がストップし、その是非をめぐって理事会で継続協議となっています。公人が公の場で発言することの責任と重みを痛感するとともに、政治家がポジティブなメッセージを発していくことの大切さを学ぶ機会になりました。
最後に、昨日の質疑を通じて最も伝えたかったことを以下に記しておきます。大会の成功に向け、東京都全体が前を向いて進んでいく一助になるよう、心新たに取り組んでまいります。
(昨日の質疑、最後の場面で)
先日、岩手県の釜石市を訪れてきました。東日本大震災後、さまざまな困難を乗り越えて、市民の希望となっていたラグビーワールドカップが台風19号の影響で中止になったことはご承知の通りです。さぞや悲しみに溢れているだろうと思いましたが、ふと立ち寄ったラグビー情報の案内所でお伺いした話に、私は驚かされました。その方は、「釜石市の試合は中止になったけれど、カナダ代表のボランティアなど、より良い形で世界に報道されることになったことが大変うれしく、また、これまでの努力が認められたようで誇らしく思う。」
とのことでした。繰り返しになりますが、会場変更の決定は残念でなりませんし、その経緯の説明についても納得がいくものではありません。しかし、これまで積み重ねてきたことが色あせると決まったわけではありません。失うものばかり考えるのではなく、今あるものに目を向け、これから得られるものを最大化すべく考えていくべきであり、その取り組み方次第では、当初思い描いていたものを上回るものを得られるかもしれないのです。東京2020大会の本当の成功に向け、引き続き邁進していただきますよう、よろしくお願いします。
編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年11月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログをご覧ください。