いのちを守る防災のために:農林業の復活こそが近道

気候変動のため、近年、暴風や豪雨の大きな被害が続いています。今年も台風やその後の大雨で大きな被害が出ています。被災された皆さんには、心からお見舞い申し上げます。

写真AC:編集部

安倍政権の下での補正予算や来年度予算では、災害復旧のみならず、防災・減災のための公共事業が追加されることになりそうです。ちなみに、3年間の時限とは言え、2018年から7兆円の防災・減災緊急対策が行われています。

しかし、100年に一度の災害が毎年発生するような異常気象の下では、堤防のかさ上げなど土木工事を全国でいっせいにしても追いつきませんし、そもそも不可能です。もちろん、何年か後には、あの時、工事をしておいて良かったねということはありうるでしょう。残念ながら、今の日本の財政状況はそんな悠長な支出を許すような甘いものではありません。

いのちを守るために、危険を予知し、どのように素早く避難するか、そんなノウハウの部分にこそ予算と人材を振り向けるべきではないでしょうか。浸水ハザードマップの正確性には驚かされますが、このような知恵を具体的に生かす時です。情報発信のためのサーバーの分散化や通信インフラも重要です。

これまで、水田の保水機能が大きな水害を防いできました。水田の貯水効果は治水ダムの3倍以上もあります。減反政策で水田が減り、都市の開発で虫食い状態になった水田地帯は水をため込むことができません。農耕放棄地を放っておいた農政のツケを今払わされているのです。ため池も管理者がいなくなり、災害の原因になりつつあります。

さらに、山崩れの原因は日本の林業の弱さとも関係します。間伐をするなど山を守れなくなって、樹木の力で土や水を保全することができなくなってしまいました。小手先の土木工事よりも、日本の農林業の復活こそが、水害からいのちを守るために必要な近道です。

昔からの惰性で、公共土木事業に頼る発想はやめ、いのちを守るしくみの充実へとパラダイムの大転換を行うべき時期に来ています。そのために、自治体や地域の仲間と協働しつつ、住民自身も「自分のいのちは自分で守る」という自覚を持って災害に向き合う必要があります。


編集部より:このブログは衆議院議員、岸本周平氏の公式ブログ、2019年11月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、岸本氏のブログをご覧ください。