不祥事に怯えてスマホ禁止、浜松市教委の安易な決定

山田 肇

この一月あまり海外の仕事が多かったが、帰国して過去ニュースを調べ驚くことが多い。教員がスマートフォンを授業や部活動で使うことを原則禁止する方針を浜松市教育委員会が固めたそうだ。

児童のノートを撮影して教室のスクリーンに映したり、跳び箱をする様子を動画撮影して見せたりと、教員はスマホを指導に活用していた。しかし、一部の不良教員が盗撮などの不祥事を起こし使用禁止を決めたという。

教員のスマホ利用禁止は生徒の未来にどんな影響を与えるか(写真AC)

スマホ利用のメリットとデメリットを秤にかけて決定したつもりだろうが、とても理解できない。

スマホ利用のメリットは利用機会の数と利用ごとの利益の積で表される。デメリットもそのような機会の数とその都度の不利益の積で書ける。例えば80×1>1×100となれば、利用禁止は合理的である。

悪意で利用する機会は多いのか。教員は盗撮などを頻繁に行う異常者ばかりなのだろうか。

善意での利用の価値は低いものなのか。動画でフォームを確認しても、跳び箱が上手に飛べるようにはならないのだろうか。

浜松市教育委員会は悪用のリスクを過剰に回避したとしか思えない。

児童生徒の善悪に対する判断能力はまだ成長中である。児童生徒がスマホを学校で利用すれば、教員よりも多く問題が発生するに違いない。このリスクを恐れて、浜松市教育委員会は児童生徒のスマホ活用はもっと強硬に禁止するだろう。

人々の生活はスマホを利用することで初めて成立している。そのような時代に、スマホの活用法を知らないまま成長していく浜松市の児童生徒に明るい未来はあるだろうか。

浜松市教育委員会は不祥事のリスクを恐れるあまり、本来行うべき教員への指導徹底は避け、スマホ禁止という安易な決定をした。しかし、それは児童生徒の未来に悪影響を与える恐れがある。

山田 肇