ホワイトハウスの主、ドナルドトランプ大統領も大統領就任以来、様々なディールと難局をトランプ風の味付けで乗り越えてきました。その切り口はスパッ、バシッという感じであの大きな体格が吠えながら迫ってきたら誰もがビビるというものです。
が、身長1.9Mのトランプ大統領も身長1.8Mの習近平氏には思った以上に苦戦を強いられており、思惑通りにならずにイライラしています。そのさなか、香港問題でアメリカ議会は「香港人権法案」を上院も下院も可決してしまいました。手続き上はこの後、トランプ大統領の署名となるのですが、今回は珍しくツィッターでのこの件については沈黙を保っています。非常に難しい判断を迫られているのだろうと察します。
香港人権法案とは一国二制度が香港で機能しているかをアメリカが監視し、仮に人権を侵害するような事実があれば制裁を行う、というものであります。よくよく考えれば一昔前に言われた「内政干渉」そのものであり、中国からすればなんでアメリカにそんなことを監視されなくてはいけないのだ、と思うでしょう。平たく言えば「お前が俺の意に反するようなことをすればお前を世間に顔向けできなくしてやるからな」というわけです。主権という範疇をどこまで認めるのか、これがあいまいになると世界で同様の動きが一気呵成に出てくるリスクもあります。
ベネズエラのように明らかに国全体が行き詰まり、国民が貧困に喘いでいるような政権に対する経済制裁や北朝鮮のように第三国を不用意に脅かすような場合は別ですが、現在の香港にどこまで踏み込むかは思った以上に難しい判断ではないでしょうか?
トランプ氏は通常の戦争は嫌いですが、経済戦争はディールのうち、と考えている節があり、通商交渉では相手が「参りました」というまで締め上げることに何ら躊躇を感じていません。ところが、この香港人権法案を仮にトランプ大統領が署名すれば米中関係は新たなステージに入る可能性はあり、香港が草刈り場となり、現在の香港での闘争に逆に油を注ぐ状況悪化を招く公算もあり得ます。
そして12月に何らかの形で部分合意を目指している米中通商交渉もとん挫する公算が高くなります。その場合、仮に通商内容でどれだけ合意しても人権法案の撤廃がなければ中国はディールしないということも考えられ、株価が大幅に下がり、来年の大統領選挙に頭痛の種となることも必至であります。
漢民族は朝鮮系民族とともに「恨み」を延々に持つ民族として知られています。それゆえ、いまだに「あの100年を忘れるな」という教育をしているわけです。あの100年とはアヘン戦争から第二次世界大戦終了までであり、一部の中国人が日本に対して異様に反応するのはそれが故なのであります。
中国はビジネスディールなら大バトルをしながらも終着点に到達すればにこやかに握手をして終わるのですが、それ以上に踏み込まれるのは「メンツをつぶされた」と感じる可能性はあり、まとまるものもまとまらなくなります。多分、中国で大きなディールをした方や学者、政府関係者はご理解いただけるでしょう。
眠れぬホワイトハウスの主はこの香港人権法案をどうするのでしょうか?私は署名しないか、留保する可能性は大いにあると予想しています。香港人のバトルの意義はわかりますが、香港経済への悪影響で多くの一般市民の生活に対してネガティブとなっており、どちらかといえば70年代の学生運動的なエキストリーム的な動きが事件性として報じられており、本音と本質が見えないのであります。もちろん、市民人インタビューしても本当のことは誰も言わないでしょう。この真意を読み取る必要はありそうです。
ただ、アメリカらしいと感じるのは「議会は正義の味方」という声を法案可決という形で世界にアピールしたことでしょう。異論はあると思いますが、私はこれだけでも十分な意義があると感じています。
#HongKong we hear you.
We continue to stand with you.
Tonight, the Senate ✔passed my #HongKongHumanRightsandDemocracyAct pic.twitter.com/ldUmjYk7yK
— Marco Rubio (@marcorubio) November 19, 2019
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月21日の記事より転載させていただきました。