マイナンバー社会の物語① 消費税と社会保障

福田 峰之

消費税が10月1日から10%に引き上げられた。生活必需品の一部は8%に据え置き、消費の落ち込みを避けるための施策がたくさんつくられた。複雑すぎる感はあるけれど、低所得者への支援を踏まえれば、現況では致し方ない事と思う。

社会的な弱者に陽を当て、公平な社会をつくるためには、情報を掌握することから始めなくてはいけない。所得、資産、その人の生活状況がリアルタイムでどうなっているかがわかれば、デジタル社会だからこそ、パーソラナイズされたサポートが実行できるのです。それも、申請主義という面倒な手続きを行うことなく、プシュッ方式で自動的に対応することができる。そのデジタルプラットフォームこそマイナンバー制度なのです。

学校を卒業し、新卒として入った企業に定年まで勤めてきました。所属する企業の定年は65歳、第一の卒業をして、友人の企業に第2の人生で働き始めて70歳となり、第2の卒業とともに年金生活に入りました。子供たちは、私立大学、専門学校を卒業し、社会人となり、今は妻と二人暮らし。自宅は都市近郊に35年前に購入した一戸建て。住宅ローンは完済しているが、子供たちの教育費が想像していた以上に掛かり、貯蓄はわずか、年金が生活の中心となっている。働いていた時は、3%、5%、8%、10%と引き上がる消費税はさほど気にしていなかった。しかし、年金生活となると気になるものであり、税の負担の中心は、所得税ではなく、消費税です。

消費税は一方から見ると同じサービスを得たのだから、同じ税を負担するという意味では公平な税と見えますが、逆から見ると導入時から言われているように逆進性があるのです。人生は思いもよらぬ出来ごとの連続。明日、会社が倒産する事もあれば、肩たたきに合う事もあれば、起業を試みて失敗する事もある。働く組織によって、健康保険も年金も雇用保険の有無も異なる。住むところによって、小児医療制度も、子育て制度も異なる。

それらの都合は、生活者としての国民の都合ではなく、企業や自治体等の組織の都合であって、その都合に合わせるために、言葉が難しい、細かすぎて字も読めない、そんな申請書を紙で提出しているのです。また申請は、サービスを受けたい本人が、必要とする時に提出することが基本で、忘れていたり、知らなかったりした場合はサービスは受けることが出来ないのです。そんな過去と決別できるのがマイナンバー制度です。

『マイナンバー社会の物語』

マイナンバー制度。スタート時点では、マイナンバーカードの普及率が低く、マイナポータルの利用度も低く、利便性が高くなかった。しかし、今では国民全員がマイナンバーカードを所持していて、所得や資産、家族状況等、社会保障の公平性を担保するために個人が認識した上で、個人情報を国・地方・企業・学校等がバックヤードで連携をしている。

マイナポータルには、本人確認済みのメールや銀行口座が登録されていて、必要な情報は申請しなくてもメールで伝わるようになっている。そのメールも手続きが終わった事を知らす内容がほとんどだ。

子育て手当ても、幼稚園の月謝も政府のシステムで自動的に計算され、振り込まれている。消費税も所得・資産に応じて、給付付き税額控除が行われている。健康保険証自体はなくなり、マイナンバーカードが保険証、診察券、お薬手帳を兼ねていて、その場での現金支払はなく、院外薬局に行くと、薬も用意されていてる。在宅医療や介護にかかわる情報は、関係者で共有されていて、個別支援計画が機能している。手続きを心配することなく安心して暮らすことが出来、また何度でも、何歳になってもチャレンジできる環境が整っているのです。

マイナンバー制度のデジタルプラットフォームが機能している社会とは、こんな社会であり、自分が心身ともに強い時代には必要性を感じなくても、セイフティーネットとして用意されているからこそ、様々なチャレンジすることが出来るのです。また、高齢になり、身体が不自由になり、所得が低くなり、社会的な弱者となった時には、必要不可欠な制度とも言えるのです。先ずは、マイナンバーカードの普及、マイナポータルの利便性向上を進めていくことから始まります。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年11月21日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。