GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)騒動で安倍政権が成功したのは、韓国政府に対して相手の面子を気にすることなく正論で堂々とたたきのめすくらいのつもりで、強硬一本槍にしたことだ。韓国にはそれが正しい「トリセツ」なのに、これまで、日本的なやさしさを発揮して足して二で割るから馬鹿にされてきたのである。
今回は日本もアメリカも遠慮なく強く出たからこそ当たり前の結論に達することができたのだ。遠回しに促したり、面子が立つ解決をなどと配慮してはだめなのである。
ただし、中国にはそれをしては絶対にいけない。中国は面子の国だし、韓国は事大主義(強い者に従うことが正しいという考え方)の国なので使い分けが必要なのである。どんなことあっても、中韓混同してはいけないのである。
中国人はお金を貸して欲しくてもなかなかそうはいわない。ただ、相手の気持ちを推し計って貸すようにすればきちんと感謝してくれる。
経済産業省にいたころ、省の幹部と中国の閣僚が円借款の延長問題を話し合う席に同席した。その閣僚は、靖国問題などいろいろ述べたあと、「円借款で日本が改革開放政策の進展にこれまで貢献してくれたことが、いかに、戦争の傷跡を癒やしてきたか計り知れない。その円借款がなくなるとすれば、それは経済的な側面に留まらない象徴的なものがあるので心配だ。引き続き日中間の友好の象徴として中国として高く評価していることを改めて申し上げたいと思う」とかいう言い方だった。
中国の閣僚としては精一杯の言葉で、威張ってはいるが、なんとかしてくれ、してくれたら恩に着るからという気持ちは伝わった。
一方、これは北朝鮮関連の交渉だが、ある時期、北朝鮮ビジネスへの期待が非常に高まった時期が合った。そのころ、ある商社が出番をうかがっていた。かつて、踏み倒されたことがあって、その貸しがある、被害を被ったにもかかわらずあまり荒立てず処理したから優遇されていると思っている様子だった。
しかし、関係者と話しているとどうも違うらしい。「あそことは共和国としてはやりたくないでしょうね。貸しがあるから強気の条件出してくると思うんですね。しがらみがないところとやりたいですね」というわけだ。かつてお世話になったから付き合いたくないというわけだ、
韓国経済は、日本から得た資金と技術で漢江の奇跡をなしとげた。ところが、それをいうことは、「民族の誇りである漢江の奇跡への侮辱」だそうだ。国交回復時の援助や借款でもあまり役に立たなかったとかいい、感謝もしてくれないのである。
むしろ、弱みを握られているような気分で両国間の隙間風の材料になることすらある。一方、韓国は足蹴にされると相手に一目置く。習近平、金正恩、トランプから屈辱的な扱いだが、ますます尊敬し尽くしたいようだ。安倍首相についても、大阪で毅然と対応したら折れてきた。
朝鮮統治でも、伊藤博文は、なんとか韓国から自助努力を引き出そうとし、独立と自治を認めようとして、誠心誠意、高宗に尽くしたがなめられただけだった。先の陛下は訪韓を希望され、ゆかり発言などもされたが、土下座して謝らせるとか、日王は百済王室の末裔であることを認めたといわれただけだった。鳩山由紀夫は土下座コメディアンとして重宝されているだけだ。
中韓に対する方針を同じ路線でするべきではない。いま、習近平の国賓としての招待を取り消すなど絶対にすべきでない。もし、そういうことをするなら最初から招待しないことだ。
念のためだが、私は別に中国に甘く当たれといっているのではない。厳しく当たるときも、つねに面子くらいは大事にしておいたほうがいい結果をもたらすだろうと言っているだけなので誤解しないで欲しい。
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授