(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国議会下院でのトランプ大統領への「ウクライナ疑惑」に関する弾劾公聴会が11月20日、ひとまず終了した。合計5日間にわたって12人が証言した公聴会では、トランプ大統領を解任に追い込むような決定的な新事実はなにも出なかった。
だが、下院民主党側は予定どおり大統領の弾劾訴追への手続きを進める構えである。一方、共和党側は、この弾劾を政権打倒だけを目指す「魔女狩り」だとする姿勢を崩していない。
その間、一般米国民の間では、この弾劾を批判する流れが現れている。上下両院での共和党の団結とあいまってトランプ大統領側への追い風が生じてきたようだ。
ウクライナ大統領との疑惑の電話会談
米国下院情報特別委員会での合計5日間、12人の証人が出席した公聴会では、今年(2019年)7月25日のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の内容が追及の焦点となった。
その電話会談では次のようなことが話し合われたのではないかと疑われている。つまり、トランプ大統領の政敵であるバイデン副大統領の息子ハンター氏の不正についてウクライナ当局に捜査させるよう、トランプ大統領がゼレンスキー大統領に求めた。トランプ大統領はその見返りとして、米国からウクライナへの約4億ドルの軍事援助を提示したのでないか、という疑いだ。