韓国で左派まで反文在寅デモ:政権の終わりの始まりか?

高 永喆

先週末、ソウル中心部では、文政権誕生に大きく寄与した蝋燭(キャンドル)デモ勢力の2万人が激しい反文在寅デモを起こした。主に、民主労総、全農、全国労働組合など左派、左翼団体が大挙してデモに駆け付けた。夕方には、青瓦台(大統領府)前まで行進して抗議すると、警察と衝突する暴力デモが発生し兼ねない寸前まで行った。

11月30日夜、ソウルの国会周辺で行われた抗議デモ(KBSニュースより)

今までは保守右派の国民延べ1,200万人が、国民的な示威として反文政権デモを主導してきた。しかし、これまで文政権を支えてきた蝋燭(キャンドル)勢力が背を向けて、反文在寅への立場に転換しようとしている。

韓国では、「悪徳弁護士は許可された詐欺師」という言葉がある。今まで、弁護士出身のでたらめ政権にだまされて、文在寅大統領を支えてきた支持層が今になって「だまされた!」と気づいている。文在寅政権の支持層は、政策判断能力に乏しいと見る向きもあった。

しかし、インターネット、携帯電話、SNSを介して情報をやりとりする中で、文政権の不正疑惑がますます暴露されている。事実を知った政権の支持層が「トリック」にだまされたことに気付き始めた。「歴代最低」と言われる、でたらめに騙され、文在寅政権を支えてきた労働組合、左派、左翼勢力までが「反文在寅」の姿勢を示すデモを開始したのは不幸中の幸いだ。

一貫性のない外交音痴ぶり。アメリカ、日本の友好国だけでなく、中国、北朝鮮からも無視される「三等国家」に韓国を転落させた。プライドの強い韓国民たちは、国際社会で威信を失墜されたことに怒りを抱えている。経済政策も愚策を発揮。失業率を増加させており、ばらまきポピュリズムにだまされ、文政権を支持してきた国民が背を向け始めたのだ。

彼らが叫ぶスローガンを見ると、「文政権はパフォーマンスだけで、国民をごまかして甘い液のみを吸う“日和見主義”の政権である」「人権、平等、正義の蝋燭(キャンドル)精神は崩れ、積弊清算と社会改革に逆走行するごまかし・トリックだけ張った」などと主張している。外交については、「親中」「従北」の主張もあるが、「GSOMIA破棄の取消は、日本、アメリカに屈従したものである」という憤慨もあった。さらに、文政権の側近で法相を辞任した曹国氏の疑惑についても「タマネギ男の大掛かりな不正を隠蔽したが、それを絶対に許さない」と怒りを示している。

韓国大統領府インスタグラムより:編集部

ごまかしや嘘、トリックだけに集中しながら日米に屈従し、選挙のみ目指しながら、一般庶民の景気を無視したことに怒りが爆発した格好だ。文大統領が曹国前法相の拘束にブレーキをかけることは、二人が「共犯」の証とも言われている。

70年代に韓国の実業家がアメリカ政界への贈賄工作を行った「コリアゲート」があったが、それくらいの大型不正が発覚するようなことになれば、文政権の政治生命に致命傷を浴びかねない事態を招くと考えられる。韓国検察庁は、文政権の大掛りな不正疑惑を把握しているとも言われ、それこそ、文大統領にとっては政権崩壊の火種になりかねない。

国民に対するごかかし、騙しも、もはや通用しない時期を迎えている。 文政権を支持する既存の新聞、テレビなどのメディアが事実の歪曲を繰り返している中、購読者と視聴者が減っている。一方、国民の多くはSNSを介して、事実を把握している。

文政権はこれまでの失策を謝罪するとともに、大胆に方向転換しない限り、政治生命はますます短くなる危険を冒すことになろう。 韓国は歴代大統領のほとんどが不幸な末期を迎えてきた歴史があるが、「歴代最低」と言われる文政権が前例を踏まず、安定かつ安全な政権として生き延びるために賢明な判断をすることを期待するものである。

高 永喆
拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員、分析官歴任

【おしらせ】高永喆さんの著書『金正恩が脱北する日』(扶桑社新書)、好評発売中です。