ルシファーの前では「嘘」はダメ!!

①オーストリアの柔道家、ペーター・ザイゼンバッハ―被告(59)が2日、ウィーン地方裁判所で5年間の有罪判決を受けた。容疑は未成年者への性的行為などだ。ロサンゼルス(1984年)とソウル(1988年)の両五輪大会柔道86kg級で金メダルを獲得した被告は裁判では自身の容疑を否定した。控訴するかどうかは弁護士との協議で決める予定だ(「金メダリストの柔道家の『蹉跌』」2017年1月19日参考)。

▲米TVシリーズ「ルシファー」のポスター

▲米TVシリーズ「ルシファー」のポスター

②バチカン前財務長官だったジョージ・ぺル枢機卿(78)はオーストラリアのメルボルン大司教時代に2人の未成年者への性的虐待容疑で禁固6年の実験判決を受けたが、現在は控訴申請中。同枢機卿はバチカンのナンバー3の立場にあった高位聖職者だ。ぺル枢機卿は一環として無罪を主張している(「豪枢機卿の『罪と罰』と『事件の核心』」2019年8月24日参考)。

③静岡県清水市で4人を殺害したとして死刑判決を受けた袴田巌死刑囚(83)は45年間以上、強盗殺人放火犯人として東京拘置所で収監されてきたが、DNA鑑定の結果、他者の関与の可能性が出てきたとして釈放。獄中時代にカトリック教徒になった同死刑囚人はフランシスコ教皇の訪日の時、東京の記念ミサに招待された。同死刑囚はこれまで無罪を主張してきた(「法王、袴田死刑囚と会見へ」2019年11月21日参考)。

以上の3件は、当方がこのコラム欄で何らかのテーマで言及してきたコート・ケースだ。そして3件とも被告は判決後も無罪を主張している。当方は3人の被告の有罪判決が正しいかどうか確信をもって断言できない。②の場合、カトリック教会高位聖職者のぺル枢機卿が嘘を言っているとは考えられないのだ。罪を犯したのならば、告白し、神の赦しを求めるのが正道だと知っている聖職者だ。その枢機卿が嘘を言うだろうか、という素朴な疑問が払しょくできない。ひょっとしたら、枢機卿は無罪かもしれない、という思いが同事件をフォローしてきた当方の心にまとわりついて離れない。

ルシファーをご存じだろうか。人類の始祖アダムとエバを騙して神の教えを破らせ、「エデンの園」から追放させた悪の天使だ。そのルシファーを主人公とした米TV番組「ルシファー」(Lucifer)というシリーズものの中で、地上界に降りたルシファーは「あなたは今、何を考えていますか」と人々に直接問いかける。ルシファーに問われた人間は心の中で考えていること、願ってきたことを正直に告白する。ルシファーの前では嘘がつけない。人を殺していた人間は警察官や裁判官の前では無罪を主張できるが、ルシファーの前ではそういかない。

番組の中で唯一の例外は、ロサンゼルス市警の女警察官クロエ・ダンサーだ。彼女は正直に自身の考えていることを語る。その内容は彼女が普段語ってきたことと一致している。すなわち、彼女は嘘をついていないのだ。ルシファーは新鮮な驚きを覚え、彼女に強い関心を持つようになる、といったストーリーから始まる(「『ルシファー』が地上にやって来た!」2016年8月27日参考)。

リベラルのCNNは「ファクト・チェッキング」でトランプ大統領や政治家の発言内容を検証する番組を放映している。なぜならば、リベラルなCNNから見れば、トランプ大統領の言動はフェイクに溢れているからだ。

確かに、大統領の発言だけではなく、現代はフェイクが溢れている。その言動の真偽を検証することは大切だが、どのようにしてそれが可能だろうか。CNN司会者のように、リベラルな思想で固まり切った人間が保守派政治家の言動の真偽を検証したとしても正しい判断は期待できない。もちろん、ウソ発見器でも十分ではない。

精神分析のパイオニア、ジークムント・フロイト〈1856~1939年)は言葉の重要性を知り、その言葉で、病んでいる魂を癒そうとした学者だ。逆に言えば、言葉にはそれを発する人間の魂がいろいろな形で込められているから、患者が発する言葉を分析することで、患者の悩みの核心に迫る、というわけだ。
そのフロイトが現代も生きていたら、フェイクの洪水に驚くだろう。それとも「いつの時代も人間は嘘をいうものだ」とため息交じりに語るかもしれない。

フェイクは単に個人レベルだけではなく、国家レベルでも見られる。日本に常に謝罪を要求する韓国政治家の発言を聞いていると、どうしてここまでも歴史的事実を歪曲できるのかと驚く。人は自分が信じることしか事実と考えないからだ、といえば、そうかもしれない。「反日種族主義」の著者は韓国民族は嘘を言うことに躊躇しないと酷評しているほどだ。

さて、ルシファーが21世紀の世界に出現し、ファクト・チェッキングをする状況を考えて頂きたい。「最後の審判」は神がするのではなく、ルシファーが人間を神の前にその罪状を訴える形で行われる。すなわち、ルシファーが検察官として人間の罪状を神の前に告発する。ルシファーが近づき、「あなたは何を考え、何を願っていますか」と聞かれた時、誰も嘘が言えない。自身が考え、願ってきたことを正直に告白せざるを得ない。CNNのファクト・チェッキングのような番組はもはや必要ではない。ルシファーを登場させるだけで、事の是非は明らかになるからだ。

皮肉に聞こえるかもしれないが、終末の時、人類の救い主、イエスの再臨が願われるより、神の摂理を破壊したルシファーの再臨こそ、時代が最も必要としていることではないか。ルシファーはフェイクをことごとく見破り、罪を神の前に訴え、明らかにさせるからだ。イエスの再臨はそれからでも遅すぎることはないだろう。フェイクが地上に溢れ、それらが次第に暴露されていく状況がみられたら、ルシファーが地上で活動していることが分かる。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年12月4日の記事に一部加筆。