日本経済新聞の電子版に『20万円で社員1人分 りそなHD「帳票ロボ」の実力』という記事が出ていた。パソコン上で動くRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とリアルな小型ロボットを組み合わせ、帳票処理の省人化に取り組んでいるというニュースだった。
YouTubeに紹介ビデオが載っていると気付いた(下記参照)。パソコンに表示されている表からRPAが一行を選び、それを帳票にプリントアウトする。プリンタへの帳票のセットと取り出しは小型ロボットが行う。そんな仕組みだった。
りそなHDが掲げる「年100万時間分の作業量削減」に貢献すると記事は持ち上げているが、そんなに立派なことだろうか。帳票、すなわち紙を使うのをやめ、パソコン上の表データをそのまま部門間で引き渡すようにすれば、このシステムは不要になるからだ。
地方公共団体でもRPAの導入が進んでいると総務省は言う。14都道府県で導入済み、政令指定都市でも40%で導入済みだそうだ。都道府県レベルでは「導入予定もなく、検討もしていない」はわずか4と、まるで導入競争が起きているかのようである。
総務省は『地方自治体におけるAI・ロボティクスの活用事例』も公表している。しかし、中身は面白くない。住民等からの申告書類(紙)を受理し、その内容を1件毎にシステム入力する作業は負担が大きい。申告書類をOCRで読んだ後、AIの力を借りて読み誤りを修正し、RPAを使って読み取り結果をシステムに入力する。そんな事例ばかりだったからだ。
東京市町村自治調査会が公表した『基礎自治体におけるAI・RPA活用に関する調査研究』も同様。例えば、つくば市の事例を次のように紹介している。
市民税に関する業務について、基幹系システムへの入力や納税通知書の印刷といった業務をRPAに代替させることで作業の自動化を行う。
住民からの申請が電子化され、データのままで基幹系システムに入力される時代が来れば、こんな作業は不要になる。
りそなにしても、地方公共団体にしても、業務改革としては中途半端と言わざるを得ない。紙を使う旧来の処理の一部をRPAに代替させようという考え方はどうも筋が悪いようだ。
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山田 肇 情報通信政策フォーラム(ICPF)理事長/東洋大学名誉教授