フローレンスおよび私が代表を務める全国小規模保育協議会が国に政策提言してきた「保育ソーシャルワーカー配置」が、来年度令和2年度予算案に盛り込まれました!
保育ソーシャルワークとは
子どもたちを取り巻く環境が大きく変化する中で、保育園でも多様な子育て問題への対応が求められています。
養育不安や子ども虐待といった親子の問題、貧困やDV、多国籍化する家庭や家族の問題、子どもと養育者の疾病や障害、 さらには保育者と保護者のコミュニケーショントラブルなど、その種類はさまざま。通常の保育では対応しきれない場合も少なくありません。
そこでフローレンスでは、課題を抱える親子により専門的なアプローチをするべく、「保育ソーシャルワーク」の取り組みを始めました。通常保育園で行う保護者支援に加えて、より相談支援・ソーシャルワークの視点を持って親子や家庭の課題に対応できるよう、専門スタッフとして「保育ソーシャルワーカー」を設置したわけです。
保育ソーシャルワーカーをおくことで、養育困難や虐待など緊急度の高いケースはもちろんのこと、これまで保育スタッフが「なんだか気になるけれど、どこに相談すればよいのかわからない」「気になるけれども大事にするほどではないかもしれない」と見守りがちにしていたケースについても、丁寧に状況を確認し対応できるようになりました。
フローレンスでの実践をもとに、全国小規模保育協議会としては、「最も厳しい状況の家庭にも寄り添える小規模保育でありたい」と、保育ソーシャルワークの実践を全国に広げていこう、と決定。積極的な政策提言を行なってきたのでした。
地域連携推進員(仮称)
さて、来年度の予算案の中で、保育ソーシャルワーカー配置はどのように実現したのでしょうか。
その名も「保育所等における要支援児童等対応事業」です。
基幹保育所に地域連携推進員(仮称)を配置し、基幹保育所内で相談支援を実施しつつ、他の保育所等への巡回支援も行っていきます。推進員は要保護児童対策協議会と連携し、保育所で見つけたケースを各関係機関と繋げ、協議していくのです。
地域連携推進員は、名前こそ違いますが、我々が提案してきた保育ソーシャルワーカーの役割そのままです。
この仕組みが機能することで、下流の児童相談所マターになる前の、上流の保育所の時点で親子の変化に気づき、適切に社会資源に繋いでいくことが可能になってくることが期待されます。
出典データ保管先:
令和2年度(2020年度)厚生労働省 保育関係予算概要
課題
せっかく厚労省がこうした保育所におけるソーシャルワークが可能になるスキームを作っても、自治体が手を挙げて、保育ソーシャルワーカーを配置する保育所を公募したり委託しなければ、絵に描いた餅となってしまいます。
ここからは心ある地方議員さんと自治体職員の出番です。
「うちの自治体でやらないの?」
「うちの自治体でやろうよ」
と、導入していってください。
子どもの危機を予防できる道具は、一つでも多い方が良いのです。皆さんの肩には、ある意味子どもの命が乗っかっている、ということを忘れないよう、動いて頂ければ、と思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2019年12月26日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。