アメリカ大統領選 民主党候補第3戦を終えて

岡本 裕明

アメリカ大統領選の民主党候補選びが進んでいます。ラスベガスのあるネバダ州で行われた第3戦はサンダース候補が開票率60%の時点で46%と圧勝といってよいでしょう。劣勢が伝えられたバイデン候補は巻き返し、19.6%でつけていますが、2倍以上の得票率を取られ、明白な差がつき始めた感じがします。

(バーニー・サンダース氏、2020年大統領選挙のためのキャンペーンサイトから:編集部)

(バーニー・サンダース氏、2020年大統領選挙のためのキャンペーンサイトから:編集部)

なぜ、サンダース候補がこれほど勢いづいているのでしょうか?

ラスベガスに行かれた方は多いと思います。あの華やかなホテルストリップに全米でも有数のきらびやかさがぎっしり詰め込まれているわけですが、実は一歩裏に入るとかなりさびれた感じがするのをご存知でしょうか?バスで東西方向に10分も行けばあのにぎやかな喧騒とは全く無縁の砂漠の中の静かなエリアになります。

ラスベガスは人の定着率が悪いところでも知られ、全米から「ひと稼ぎ」しに来るようなタイプの方も多いとされ、同地に住んでいたある知り合いの日本人も1年いたら人生の歯車が狂うようなところだと言っておりました。そこには1%と99%のアメリカがちりばめられているといってよく、選挙権者は99%の立場が他州以上に強く出る州だと個人的には思っています。

トランプ大統領が生み出した「成功したアメリカ」とは株価が上昇し、企業業績が上がることですが、多くの普通の人たちにとってはおこぼれどころか、物価高でマイナスになってしまった方も多いのかもしれません。住宅費が上がり、住むところさえまともに確保できなくなったカリフォルニアの一部地域もあります。

我々が普段目にする報道はきらびやかなアメリカであり、普通の人のアメリカはあまりフォーカスされません。プール付きの豪邸に住んでいるじゃないか、というイメージがあるかもしれませんが、そんなのは極々一部で皆がそんなところに住んでいるわけがありません。多くの黒人、ヒスパニック系、アジア系の労働者は全く違う世界にいます。

今回サンダース候補がリードしている最大の特徴は若者からの圧倒的支持であります。高い学費を賄うために学生ローンをしても破綻するアメリカの声であります。学生ローンの残高は1.5兆ドルであり、住宅ローンの次に多く、クレジットカードや自動車ローンをはるかに上回る規模になっています。

私大の1年間の総費用(含む学生寮代)は7万ドル(780万円)を超えるとされ、日本の医学部より高いのであります。日本では住宅ローンを25年ぐらいで返済するのにヒーヒー言っていますが、アメリカでは巨額の学生ローンが卒業と同時に重くのしかかり、稼いでも稼いでもこの支払いに消えていくのであります。

よって学生にとって授業料を無料にするというサンダース候補の公約ほど甘い汁はないといってよいでしょう。

私はこのブログに世代交代が進むアメリカということを書かせて頂いたことがありますが、今回の選挙も誰のためのアメリカを作るべきなのか、国民が今まで以上に強い関心をもって考えているように見えます。選挙においては既に若者が高齢者層より数の上では支配権を持っています。良きアメリカを知り、成功者のアメリカとしての自負がある50歳代以上とそうではない普通のアメリカ人のギャップがにじみ出ているのが今回の選挙でありましょう。

選挙の推移ですが、私はまず、スーパーチューズディから参戦するブルームバーグ氏への支持率がどれぐらいなのか、見てみたいと思います。そして最終的にバイデン氏とブルームバーグ氏の間で一本化し、サンダース氏を追い落とす作戦に出るしかないと思います。民主党幹部はサンダース氏では大統領選は勝てないと思っています。私も勝てないと思っています。ですが、中道左派であるバイデン氏ないしブルームバーグ氏ならばトランプ大統領の地位は相当危ういとみています。

今回の選挙のポイントは国民の4割もいる無党派と称される人を民主党候補がさらいつつある点であります。無党派とは興味がない人たちでありますが、「怒り」に対しては同意しやすいという心理があることも以前ここで説明しました。これが私は今回の選挙の最大のポイントであるとみています。

行方は混とんとする気がしています。引き続き折に触れて大統領選について話題に触れていきたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年2月24日の記事より転載させていただきました。