新型肺炎の影響が、日本国内でも日に日に増しています。非営利組織を経営する立場として、論点整理しておきたいと思います。(2月24日時点)
1.世界と日本で、いかに拡がりつつあるか
2月24日時点で、全世界で7.9万人が感染し、2,619名が死亡。内訳は、中国7.7万人(死亡2,595)。韓国763人(死亡7)、イタリア157人(死亡3)、日本147人(死亡1)、シンガポール89人(死亡0)、イラン43人(死亡8)の順になります。別にダイヤモンド・プリンセス号691人(死亡3)です。イタリアやイランに広がるなど、全世界的な問題となっています。カンボジアで1人、インドネシアが0人などは、検査体制が不十分だからとも言われています。
次のデータで、ニュースよりも早く最新の世界の感染者状況を公表されています。
https://ncov.dxy.cn/ncovh5/view/pneumonia(中国語)
2. インフルエンザと比べて危険なのか
まずインフルエンザの死亡率が0.01%程度であるのに対し、現時点で全体では3%の死亡率となっています。またタミフルのような抗ウイルス薬が未開発ですから、危険な状況であるのは間違いありません。
他方、武漢はじめ湖北省の死亡率が3.8%であるのに対し、それ以外の地域の死亡率は0.8%です。市中感染がひろがり、重症患者に対しての対策が不十分になった時のリスクを考える必要があります。
また年代別の死亡率も大きく異なります。80代は14.8%、70代は8%ですが、60代3.6%、50代1.3%、40代0.4%、10-30代は0.2%です。この数字は武漢も含めた数字ですから、医療体制さえ維持できれば、50代以下の健康な方の場合、そこまでの不安を感じる必要はありません。
新型肺炎、高齢者や持病ある人に高い致死率 対策難しい無症状の人からの感染(毎日新聞)
日本の場合、感染自体は止められない中、いかにピークをずらし、重症患者に対応できるキャパシティを維持できるかがポイントになります。
3. 検査がなぜできないか
新型肺炎の疑いをもっても、簡単に検査は受けられません。その事をもって、「政府は実際の感染者数を隠蔽しようとしているのでは」と考える人が現れています。しかし、それは正しくありません。
検査は6時間かかる大掛かりなものであり、都道府県ごとに検査器械も限られていますから、現在は症状が重い方が優先されています。軽症の方を検査する余裕がないのです。そもそも新型肺炎に対応した治療法は確立されていませんから、検査にこだわらず、自分で対応していく必要があります。50分程度で診断できる器械の導入が進んでもいるようで、もう少しで診断体制も改善されるでしょう。
新型コロナウイルス、流行期に備えたいこと。チェックポイントと専門家の見方(telling)
とはいえ、国内の感染者数がはっきり見えない状況があるのは確かです。風邪症状がある方は必ず休み、他人に移さない努力を払う必要があります。
4. イベントは自粛すべきか
室内型で、不特定多数の方が参加するイベントは自粛せざるをえないと考えています。
例えば北海道では、感染症に対応したベッドは全道で94床しかなく、今後のためにベッド数確保を急いでいます。武漢(中国)や大邱(韓国)のように大量感染が発生した場合、重症患者への対応が間に合わず、死亡率が急増するリスクがあります。
感染者増加の北海道 道庁が病床確保に全力 患者増加で不足懸念(NHKニュース)
感染者が発生するのはやむを得ず、今後1-2ヶ月の中でいかにピークを避け、感染者の増加をなだらかにするかが重要です。その意味では、人が密集するイベントを実施するのは当面は避けざるを得ないと考えます。
5.中国をはじめ、感染国からの入国を拒否すべきか
現在、中国湖北省(武漢含む)・浙江省に滞在歴がある外国人の入国は、日本も受け入れていません。ただし上海など中国の他地域では新しい感染者がゼロに近づいています。それ以上に制限を増やすことは無用と考えます。
むしろ、日本が他国から入国拒否を受けるケースが今後増えることを懸念すべきでしょう。
インドネシア、新型肺炎疑いで日本人の入国拒否(日本経済新聞)
6. RCFではいかに対応しているか
先週17日(月)の時点で、まずは満員電車を避けられるように、時間差通勤を推奨しました。しかしそれでは足らず、翌19日(水)からは、自宅での在宅勤務を推奨するようにしています。また、不特定多数を招くイベントの開催は行わないこととしました。社員を守るのもそうですが、感染のピークが上がらない状況をつくるためには、やむを得ない状況と考えます。
最後に
特にSNSをみていると、政府や特定個人を糾弾するような意見が増えていることを懸念しています。私は上記のように理解していて、政府に広報発信やダイヤモンド・プリンセス号での衛生管理などで問題はありましたが、それでも大きな方向性に間違いはないと感じています。
個々の反省は然るべきですが、「厚労省は無能」「政府は隠蔽している」などと発信するのは、社会不安を招くものでしかないと危惧しています。ぜひ一度、個人や組織の中で、冷静に論点ごとの整理を行うことをお勧めします。
編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年2月24日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。