新型コロナ:Jリーグの延期は賢明、政府の対策は自主判断任せ

中村 祐輔

コロナウイルスについて触れるのをやめようと思いつつ、あまりのおかしな決定や報道に、今日も書かざるを得なくなった。

Jリーグが全ての試合を3月15日まで延期すると発表した。感染経路がわかっていない、コロナウイルス感染症が見つかっている以上、最悪の事態を避けるためには賢明な判断だと思う。

危機管理は、いろいろなシミュレーションをして、最悪を避ける必要があることをこのブログで何度も取り上げた。この観点では、やはりクルーズ船で3分の1もの感染陽性者が出た後は、すべてが後手後手であった。

今回のサッカーの決断は、初めて最悪を防ぐための措置であったように思う。ボヤを消そうと思って、小出しに手を打った結果、消火できず火が燃え広がりつつある現状を認識した点では高く評価できるものだと思う。

昨日は日帰りで大阪に出張しが、東京と大阪でのコロナウイルスに対する温度差が見えた。大阪の地下鉄でマスクをかけている人は、東京に比べてかなり少なかった。横浜のクルーズ船が近いことや東京都で見つかったウイルス陽性者の方が大阪よりも多い(人口が多いから当然ともいえるが)ためかもしれない。

しかし、大阪駅近辺での人通りの少なさは印象的だった。松井大阪市長は、「政府が今日発表したことは、1週間前から実施している」と言っていたが、何でもかんでも民主的にお願いするものでもあるまい。

感染症対策について記者会見する加藤厚労相(厚労省YouTube

この感染症対策は、トップダウンの強いリーダーシップが必要だ。自主判断に任せるような案件ではない。医療崩壊や感染拡大を防ぐために、軽症の人は自宅で安静療養しようとのことだが、軽い、重いの判断は個人個人で大きく異なる。

もっと明確に定義しない限り、「迷惑をかけてはいけない」と我慢した人が、急に悪化すれば誰が責任を取るのか?表面的な取り繕いではなく、明確な指示が必要ではないのか?机上の発想ではなく、現場の視点に立った指針が必要だ。

瀬戸際と言うならば、絶対に油断をしてはならない。大量出血で生命の危機に瀕していれば、あいまいな指示ではなく、その時にすべきことを断行することが不可欠だ。10時のニュースで、「春休みを前倒しにすればいい」とコメンテーターが珍しく正論を述べていたが、春休みとゴールデンウイークをまとめて前倒しすれば経済への影響は軽減されるのではないのか。

そして、東京オリンピックを無事開催するためには、これくらいの思い切った手が必要ではないのか?もし、これに失敗すれば、大火事は免れない。感染が拡大した後に、「…れば」と言っても「覆水盆に返らず」だ。

「感染のピークを低くして、ピークを遅らせる」のでいいのか?そのピークが5月になれば、オリンピックが危うくなる。今、日本がすべきことは、3月の初めにピークを迎えさせて、その後収束させていくことだ。危機管理ができない日本と海外は見ている。これでいいのか、日本という国は?


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年2月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。