専門家会議が「爆発的な拡大は抑えられている」とコメントしていた。それならば、どうしてプロ野球は開幕を延期し、Jリーグは再開を4月に延期したのか?プロ野球の開幕までまだ10日以上あるのに?
厚生労働省の8日12:00時点のデータでは、前日比のPCR検査数は+147件となっている。この数字には唖然とせざるを得ない。政府の打ち出す施策とその数字の乖離は理解不能だ。
しかも、147名中の陽性者数は47名で、約3名に1人となっている。爆発的な拡大は起こっていないという科学的な根拠が、この47名の陽性者数では心もとない。拡大が抑えられているのではなく、検査が抑えられているだけではないのか?
どうも、検査数が増えない最大の理由は、病原体をあつかう人の感染リスクと検体の輸送のようだ。本来は特別な施設で処理しなければならないウイルスを取り扱うので、慎重に慎重を期さなければならないことは当然だ。感染リスクを冒すのは避けたい気持ちも理解できる。
しかし、検査をするだけならば、ウイルスを生きたまま搬送する理由などどこにもない。採取した検体(綿棒)をウイルスは殺すが、RNAを壊さない溶液に浸し、さらに容器ごと消毒すれば(紫外線を通さない容器に入れ、外部から紫外線照射をするなど)、輸送や検査時のリスクは最小限になる(ゼロではないと怒られるかもしれないが、操作に慎重を期せば限りなくゼロに近づけることができる)。この状態ならば、民間検査企業ももっと検査受託できるはずだ。
非常時には平時の発想ではなく、どうすれば必要なことを可能にできるのかといった考え方が必要だ。これまでの経緯を見ていると、経験に基づく対応というプロトコール主義が優先されているように感ずる。今までにない感染力の高いウイルスで、しかも、致死率1-3%のウイルスである(日本では低いが、イタリアではかなり高い)。
私が耳にする情報では、疑いのある患者でも検査にたどり着けないことがあるようだ。爆発的な感染拡大が起こっているイタリアでは1日1000人を超える感染者が確認されているが、日本では1日200人にも満たない人しか検査されていないのだから、爆発的に感染陽性者が増えるはずもない。
医療機関の限度を超えた感染者が見つかると対応できなくなるとの主張が強いが、検査数を抑えてウイルス陽性者数を抑えても、ウイルス感染そのものが抑えられるわけではない。確かに、一斉休校は評価できるし、イベント自粛も賛成だ。しかし、この検査数の少なさは異様だ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年3月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。