下表は3月10日午後の香港紙South China Morning Post(SCMP)にある国別のCOVID-19感染者と死者の状況だ。死者はついに4千人になった。中国が3千人以上を占めるが、ここ数日の増加ぶりから中国以外の数がじきに1千人を超えよう。4日に書いたように流行は明らかに中国国外に移った。
韓国紙や日本の一部マスコミのみならず国会に招致された野党推薦の有識者など、日本の感染者が少ないのはPCR検査が十分に実施されていないから、とする論が少なくない。確かに「今月中に7千件/日を目指す」のではいかにも少なく、もっと増やす必要があるだろう。が、不思議なことに彼らの論からは、日本の死者(クルーズ船を除く)未だ10人程度と少ないことが抜けている。
日本の対応を腐したい韓国紙などは、感染者が10倍はいるはずなどとする識者の話を載せる。が、とすれば日本の感染者は5千人を超え、そうなるとイタリアや韓国の例から推して、日本の死者が5倍から10倍ほどでないと辻褄が合うまい。彼らにはこの点も考察・言及して欲しい。
次に回復者。SCMP紙はその人数も日々報じる。10日時点では全世界で63,611人だが、中国が59,897人(94%)を占め、うち湖北省が47,585人(中国の79%)。真偽は不明だがご同慶の至りに違いない。(なぜか中国全体の回復者数はChina Dailyにだけ、湖北省の数はGlobal Timesにだけ載る)。
SCMP紙が中国以外の回復者数をどう調べているのか不詳なので数字の信憑性は判らない。中国紙が熱心に回復者の数を報じる意図は言わずもがなだ。が、日本でも4百名以上(クルーズ船含む)という回復者の数を日本のマスコミが熱心に報じないのは、死者の少なさを論じないのと同じ何らかの意図からだろうか。
これらに基づいて10日時点の回復者の割合を弾いてみると、全世界56.5%(63,611/113,358)、中国全体74.2%(3,714/80,754)、湖北省70.2%(47,585/67,760)、湖北省以外94.8%(12,312/12,994)、中国以外の全世界11.4%(3,714/32,604)となる。日本はクルーズ船込みで35%ほどだろうか。
6日の朝鮮日報「新型コロナの完治率、中国65%・韓国1.5%」なる記事には、「韓国の完治者は88人で比率は1.5%、中国(65%)、イラン(19%)、イタリア(9%)はもちろん、中国を除く世界平均(8.7%)よりも低い数値」とある。日付の違いからか、SCMP紙の数字とは微妙に差がある。
同紙も韓国の率の低さが「流行が始まってあまり時間が過ぎてないため」、「中国は流行が早かったため、退院する人も増えている」、「イラン・イタリアは感染後にかなり時間がたってから感染が確認され、完治判定も早く行われているようだ」などとの専門家の見解を載せている。
記事はまた「患者の80%は大きな症状が出ておらず、通常は2週間あれば自然に治る」との見方も載せる。が、これら同紙の記事を総合すると、「放って置いてもほとんどは治る」といっているように読めなくもない。日本でも同様の報道もあり、きっとそうなのだろう、と筆者も思う。
だが、この新型コロナウイルスの極めて厄介なところは、潜伏期間が10日以上と比較的長いこと、その潜伏期間の症状のない間にも他人に感染させることであり、そして高齢者や基礎疾患のある者が感染すると重篤になることだろう。
政府は10日、今後10日間程度はこれまでの行動を維持することを国民に要請した。特効薬がない以上、感染していると分かっても、動いて他人と接すればうつす可能性があるので、無症状や軽い症状の者は自宅でじっとしているしかない。病院のベッドは重篤な方のために空けねばならぬ。
筆者の周りでも、卒業や入学や就職など人生の節目の掻き入れ時なのにキャンセルばかり、と嘆く飲食店経営者が少なくない。株も大幅に下がった。が、この10日間を疎かにすれば、この先また何年間も苦しまねばならぬかも知れぬ。辛く厳しいが、ここは国民一丸となって耐える時だ。政府にも大胆な予算措置による救済策を望む。
他方、習近平の中国は、感染者や死者の増加が減った(減らした?)ことをもって、活動再開に舵を切ったようだ。WHOすらパンデミック化の可能性を示唆したが、終息が本当なら、それはそれで結構な話だ。だが、ウイルスの出所が武漢と限らない、などとする中国のプロパガンダは上手くはいくまい。
10日のNewsweek日本語版は「新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から」との遠藤誉氏の記事を載せた。記事によれば、中国科学院の研究者が2月21日に投稿した論文は、93件のサンプル分析から新型コロナウイルスの5つのグループがいずれも武漢や広東省発かまたはその亜種であるとしているそうだ。
何度も書くが、昨年のうちにヒト・ヒト感染すると判っていたのに、(WHOも抱き込んで)春節前の1月20日過ぎに人の移動を禁じることをしなかった習近平に、このパンデミックの責任の一切がある。スペイン風邪が歴史に名を残すように、習近平の名も、その下手人としてこの先永遠に残さねばならぬ。