予想されたように、新型コロナウィルス関係の便乗商法が目立ってきている。「摂氏26度で死滅」などというのは「普通に考えてデマ」だが、「免疫力を高めましょう」的な商法は、健康増進のコピーとしては一般的なものだし、それ自体悪いことではない。免疫力の低下と重症化がリンクしているようなので、多くの消費者はこのコピーに敏感になってしまう。
問題になるのは、新型コロナウィルスと密接な関係にあるかのような表現がなされている時だ。以下、3月11日の時事通信のニュース(「『コロナ予防』広告に注意=消費者庁、販売業者に改善要請」)より。
新型コロナウイルスの予防効果をうたうインターネット上の商品広告について、消費者庁は11日までに、販売業者に表示の改善を要請した。消費者に対しては、「効果を裏付ける根拠は認められていない」などと注意喚起している。
この記事では、続けて、「同庁によると、2月25日~3月6日、ネット上の商品広告の緊急監視を実施。健康食品や空気清浄機などを販売する30事業者46商品が予防効果を掲げていた。健康食品分野が最も多く、『ビタミンCはコロナウイルスから体を守る』『新型肺炎には早期の漢方が効果的」などとしていた。」と報じている。科学的裏付けのない効用の表示、成分の表示は景品表示法違反の疑いがあるので、消費者庁が乗り出したという訳だ。
ただ賢い業者ならば、敢えて「コロナ」の表現を用いず、「免疫力UP」とかいってボカすだろう。実は何のことだかわからなくても、消費者は「免疫(力)」というフレーズに敏感になっているのだから、露骨な「コロナ」の表現など使わずとも消費者は敏感に反応するのではないか。広告で重要なのは、「共有知識」として「どのフレーズへの感度が高いか」である。
真偽は分からないが、納豆が品薄になっているそうだ(私の職場や自宅の周辺ではそんなことはないが)。納豆は健康にいい=免疫力UP=コロナ対策という連想なのであろうが、そんなの納豆に限ったものではないし、納豆が突出して健康増進によいのであれば日本では主たるオカズが歴史的に納豆になっているはずである(個人的には好きな食べ物であることをここで断っておく)。もちろん科学的因果が証明されているならば、それに従うべきであるが。
そういえば関西テレビの「発掘!あるある大事典」の情報捏造事件(2007年)もテーマは納豆だった。この時は「納豆はダイエット効果が高い」というものだった。この放送回終了後、消費者は納豆に殺到し、店頭からその姿を消した。「納豆」という独特の雰囲気がそんな気分にさせるのか。そうであるならば、次は違う「ネバネバ」系に殺到するのだろうか。
消費者を惑わすのは商品の表示のみではなく、メディアの報道もそうである。「公器」の体裁がある以上、怪しげな広告よりもはるかに消費者に対するインパクトが強い。新型コロナウィルスに関する報道も、色々な知識人が色々なことをいっているが、本当に信用できるのだろうか(特に医療、衛生分野の専門家の発言は重い)。知識人間での相互批判がもっと盛んになるべきである。