G7の中銀、新型コロナウイルスへの対応一覧

安田 佐和子

世界全体の新型コロナウイルス患者数が3月6日に10万人を超え、春の到来を受けても終息の兆しは見えず。暗い影が世界を覆うなか、各国政府・中央銀行は対応しつつあります。

(カバー写真:Federalreserve/Flickr)

例えば、主要7ヵ国(G7)は米連邦公開市場委員会(FOMC)の緊急利下げを始め、以下のように行動してきました。

米国

2月28日:パウエルFRB議長が声明を公表
経済を支えるべく適切に手段を講じていく」と宣言し利下げの地均しを行なう。

3月3日:緊急利下げを実施
FOMCは、FF金利誘導目標を50bp引き下げ1.0~1.25%に設定。緊急利下げ、25bp以上の利下げは共に08年10月以降で初めて。パウエルFRB議長は、会合後の記者会見で「政策手段を用い適切に行動する」と発言するも、今後の対応は検討中と述べる程度。金融政策の枠組み改定の発表を6月に控え、マイナス金利導入など現行の政策手段以外の選択肢について言及せず。また、仮に新型コロナウイルスが早期に終息し米経済への影響が限定的にとどまった場合は「躊躇せず適切に行動する」とも語る場面もあり、緊急利下げ後に株価を下支えできず。

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(作成;My Big Apple NY)

過去を振り返ると、FF金利が米10年債利回りを上回って推移した後に景気後退が発生。

2018年12月まで9回に及ぶ利上げを経て、金融政策は中立寄りに。2019年の3回の予防的利下げで再び緩和寄りへシフトしてきたが、さらに緩和方向へ傾倒し成長を下支えへ。

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(作成;My Big Apple NY)

3月9日:オペの上限を引き上げ
①翌日物の上限を1,000億ドル→1,500億ドル、②14日物(3/10、12実施分)の上限を200億ドル→450億ドル。

3月11日:オペの上限を引き上げ
①翌日物の上限を1,500億ドル→1,750億ドル、②2~4週間程度の期間の資金供給も拡充、③1.5兆ドルの追加オペ実施を発表(5,000億ドルずつ/12日:3ヵ月物、13日:1ヵ月物、3ヵ月物)。

3月11日:資産買入の対象拡大
年限含め買入対象の拡大を発表、財務省短期証券(Tビル)の他、13日からクーポン債やインフレ指数連動債(TIPS)、変動利付債(FRN)を追加。

日本

3月2日:黒田談話を発表
適切な金融市場兆調節や資産買入の実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく」と表明、総裁の談話発表は、2016 年6 月の英国国民投票でEU 離脱が決定した当時、財務相と共にリリースして以来となる。単独では2015 年7 月のギリシャ債務問題以来と、極めて異例。

3月2日:通常のETFを過去最大規模の1,002億円買入
TOPIX上昇中の前場で買入を実施したのは、前任の白川総裁時代と合わせ2回目

3月13日:日銀、18~19日会合でCPと社債の購入拡大を検討(報道)
現状はそれぞれの残高を2.2兆円、3.2兆円で維持

ECB

3月2日:ラガルドECB総裁が声明を公表
適切で的確な措置を用意」があるとの見解を表明。

3月12日:定例理事会で緩和策の拡大を決定
・政策金利据え置き→中銀預金金利をマイナス0.5%、 主要政策金利のリファイナンスオペ金利をゼロで維持。
・ガイダンス→「物価が”2%未満ながら同水準に十分近い”目標水準にしっかり収れんされるまで現行の政策金利で据え置き」を維持
流動性供給措置を拡充→①6月開始の貸出条件付き長期資金供給オペ・第3弾(TLTRO3)まで、3月16日から長期資金供給オペを毎週実施、満期は6月24日、利率は中銀預金金利(-0.5%)を適用、②TLTROの利率基準を-0.25%へ引き下げ、貸出残高維持で-0.75%へ引き下げ(従来は主要リファイナンス金利の0%、貸出残高2.5%以上の増加で利率を中銀預金金利の-0.5%を適用)
量的緩和(QE)の拡充→従来は月200億ユーロ買入→年末まで資産購入枠を一時的に1,200億ユーロ追加、対象は社債中心
銀行の資本要件の一時的未達を容認→対象は①第2の柱ガイダンス(P2G)、資本保全バッファー(CCB)、流動性カバレッジ比率(LCR)

ECB、3月時点のスタッフ経済見通しは以下の通り(新型コロナウイルスを反映せず)。

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(作成;My Big Apple NY)

英国

3月5日:緊急利下げを実施
イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は、政策金利を50bp引き下げ0.25%に設定緊急利下げは2008年以降初、利下げは2016年8月以降初めてとなる。カーニー総裁は、会合後の記者会見で必要に応じて追加措置を講じると発言。QE再開見送りをめぐっては、依然として政策手段のひとつと述べた。3月16日にBOE総裁に就任する英金融行動監視機構(FCA)のベイリー長官も会見に参加、追加緩和余地に言及した。
利下げ以外に、以下を決定。
国債などの買い入れ枠の規模を維持(既に上限到達、国債:4,350億ポンド、社債:100億ポンド)、政策金利がゼロに接近するなか、政策手段を温存か。
中小企業向けに資金供給枠組み”TFSME”を新設、1年間の運用を想定し1,000億ポンドの供給を目指す。

カナダ

3月4日:利下げを実施
カナダ銀行は政策金利を50bp引き下げ、1.25%に設定。利下げは、2015年7月以来となる。声明では感染拡大を受け「企業支出と輸出は弱まり」、企業と消費者の信頼感は「悪化する公算が大きい」と説明。その上で「景気見通しは明らかに1月時点よりも下振れ」しており、「経済成長と物価上昇率の目標を維持するため、必要ならさらに金融政策を見直す用意がある」と追加利下げ余地を残した。

――このほか、G7を始め国際通貨基金、世界銀行は以下の通り行動しました。

3月3日:G7財務相・中央銀行総裁が声明を発表
「全ての適切な政策手段を用いる」

3月3日:世界銀行、緊急支援を決定
発展途上国向けに医療・経済両面で120億ドルの緊急支援を直ちに実施すると発表。

3月4日:国際通貨基金(IMF)が緊急融資制度を創設
エマージング諸国、貧困に喘ぐ諸国のために総額500億ドルの緊急融資枠を設定。

以上、今回はG7諸国の金融政策に国際機関の行動を加えた内容をお届けしました。次回は、財政出動についてまとめる予定です。

ご参考:OECDが3月2日に発表した暫定的世界経済見通し

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(作成;My Big Apple NY)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年3月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。