新小銃の調達に30年かけて平然としている自衛隊と仏軍の拳銃、狙撃銃調達の違い

1月15日付けのJane’s Defence Weekly で仏国防省の新拳銃及び新狙撃銃の調達に関する記事「France award pistol, sniper rifle contracts」という記事が出ています。

DGA(仏国防調達庁)は新拳銃にグロック17を選定。74,569丁を44万ユーロ(約54億円)となります。
当初の計画では75,000丁を調達。費用には5千100万発の拳銃弾、4百万発のメーカーのトレーニング用弾、200万発のサブソニック弾、1,500セットの昼夜兼用照準装置(フラッシュライト&レーザーポインター)が含まれることになっています。これは特殊部隊精鋭部隊で使用する拳銃やそのアクセサリーも含まれているということです。

グロック17(Wikipedia:編集部)

つまり調達単価は契約額を調達数で単に割った約7万2千円ではなく、かなり安いということです。対して陸自の新拳銃調達はH&Kの##が選定され、来年度予算で323丁が3千万円を要求しています。調達単価は9万3千円となります。予算に計上されている数字は四捨五入されているので、9万円は割る可能性があります。

それにしても大きな差があります。フランスに限らず、他国では新小火器の導入に関してはシステムとして捉えて、訓練なども含めて調達計画を立てます。対して防衛省、自衛隊では火器単体で要求します。

自衛隊では火器に搭載する光学照準器やフラッシュライトは別な担当者が別予算で調達することになっています。これでは装備体系や訓練体系が確立できません。考え方が昭和で止まっています。率直に申し上げて硬直した官僚主義で、平和ボケしています。実際に戦争しないからいいだろ、と高をくくっています。

これが我が国の「軍事の専門家」の実態です。更に申せばSIG社のP220をライセンス国産した9ミリ拳銃は2500発も撃てばフレームにクラックが入ります。つまり耐久性はオリジナルよりも一桁低い欠陥品であり、オリジナルの5倍以上のお値段で調達していました。

新狙撃銃に選定されたのはベルギーのFNハースタルのセミオートマチック式の7.62mm狙撃銃、SCAR H PRが選定されました。計画では2,600丁を調達、315万発の徹甲弾、35万発のマッチグレード弾、ナイトビジョン1,800セット、サーマルサイト1,000セットとなっており、契約額は1億ユーロ(120億円)でFNは2,620丁の小銃本体、光学サイト、2脚やサプレッサーなどのアクセサリー一式、暗視装置類は同社のパートナーのOIP センサー・システム&テレフンケン・ラコモスが担当します。デリバリーは本年から始まり、完了は2022年に完了する予定です。つまり2年間です。

小銃の調達に30年も予定し、光学サイト、暗視装置、その他のアクセサリーも調達せず、小銃単体を調達する防衛省、陸幕とは偉い違いです。

因みに陸自の採用した狙撃銃はFMS経由で爺さんの小便みたいにチョロチョロ調達しているので調達単価は100万円以上、市価の3~4倍以上です。中には重心が錆びたものもあって、海兵隊の不要な在庫でも売りつけられたのでは、というものも混じっていました。当然というか、セットで暗視装置やサプレッサーをシステムとして調達はされておりません。

まともにやる気ない、形だけならば実銃をやめて東京マルイのエアガンで武装した方がいいいでしょう。格好は付きますし、お値段は一桁以上に安くなります。それに全部お金は国内に落ちます。調達自体が目的化しており、実用性は問わない、安ければいい、戦わないという前提で調達するなら皮肉でもなんでも無く、それでいいんじゃないでしょうか。

■本日の市ヶ谷の噂■
自衛隊の現用9ミリ拳銃は、調達にさいして驚くべきことに要求仕様には耐久性が入っていなかった。このため約2500発も撃てばフレームにクラックが入る粗悪品をオリジナルの5倍以上のお値段で調達、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。