マンダレー工科大学(MIIT)の人材育成~インド政府の挑戦

マンダレー工科大学(MIIT)は、ミャンマー政府とインド政府が協力して設立し、運営している大学です。ミャンマー政府は建物や水道などのインフラを、インド政府はIT設備、カリキュラム、授業のやり方等を整備したそうです。インドは多くのIT人材を世界に輩出している国家であり、学校での人材育成には工夫がなされている国です。これまで、他国の大学にIT人材養成に関するアドバイスはしてきたそうですが、学校運営にまで本格的に関与したのはMIITが初めてケースということです。

このMIITモデルでの人材育成が成功したら、今後、インド政府は、このモデルを世界に広げていきたいという意向だそうです。その際には、対象国がインドに好意をもっているか、インドの教育に興味を持っているか、その上で、インド政府に依頼を出すことが必要となるそうです。MIITが成功したら、次はモロッコで展開できないか、考えているそうです。

MIITに訪問した際は、インド人ディレクター KRV.Subramanianさんが対応してくれました。インド政府も本気なようで、インドからMIITに12名の教師を派遣しており、彼らの授業は英語で行われています。

入学するには厳しい選抜がなされて、1学年80人という優秀な学生が日々学んでいます。エンジニアの養成ですから、単に教室で授業を受ければ良いのではなく、IT企業によるインターンを重視しているそうです。その意味では、インターンを受け入れてくれる企業を常に探しているそうです。

座学と実際の企業での実務が組み合わされて、人材を育てる仕組みが出来上がっているようです。現在は、最終学年でインド、ヤンゴン、マンダレーのIT企業ででインターンが行われているそうです。インターンは学生にとっても成績に直結するカリキュラムになっています。受け入れ企業にとっては、インターンであっても戦力として使うことが出来る、あるいは、学生を予めリクルートできるというメリットもあります。

設立されて5年、卒業生はまだ出ていないそうですが、多くの卒業生がIT企業に就職するようです。「世界中のIT企業に就職するのは良いと思うが、ミャンマーの社会課題を解決するためにも自ら起業する生徒も重要ではないのか?」と質問すると「その通りです。大学内に起業支援拠点みたいなものを作りたいのですが、設立してまだ5年、そこまで出来ていないのが現実です」と。「まだ、教室も空いてるので、起業支援拠点をつくりたいと考えています」と。こうした部分で日本が協力出来れば、アジアの成長を日本の成長に繋げることが可能となると思います。

IT企業に就職する卒業生、自らビジネスを立ち上げる卒業生。インドとしても、大学運営をサポートすることで、他国での人材育成モデルを構築したいと考えているそうです。IT人材の育成に関して、日本は何が出来るのであろうか?そもそも日本でIT人材の育成が進んでいないので、他国の心配をする余裕が無いのかもしれません。

日本での人材が育成出来ていないなら、逆にミャンマーのIT人材に協力を仰ぐことも大切だと思います。大小関わらず、1つの企業が、同国人のみで運営できる時代は終わりを遂げようとしています。

意見交換終了後、学内を案内してくれたのですが、難点はつくりの問題でもありますが、校内にたくさんの鳥がいて、その糞が校舎のあちらこちらにある点です。逆に凄いところは、学内あるサーバーが、国内大学NO1どころか、ミャンマー国家でのNO1の設備だということです。

マンダレーは、ヤンゴンに次ぐ都市ではあるけれど、高層ビルが立ち並んでるわけでもなく、少し落ち着いた感があります。MIITはある意味、都市部の誘惑があるわけでも無く、落ち着いて勉強できる環境が、そこにはあるのです。卒業生がミャンマーのIT化を押し進め、また日本を含めて世界中でIT人材として活躍して欲しいものです。

MIIT訪問後、ミャンマーソフトウエア事業者協会マンダレー支部役員との意見交換会を行いました。ITビジネスをリアルで行っている若手経営者の集まりでもあります。マンダレーには、まだまだIT企業の数は少なく、ITで社会課題を解決するという風土が確立されていません。ITが社会のプラットフォームになるには少し時間がかかるかもしれません。それでも、一歩踏み出せば、既得権益や規制等も少ないでしょうから一気に進むことが考えられます。それがデジタル社会の長所でもあります。

僕がミャンマーにアドバイスをするなら、先ず最初にマイナンバー制度を導入し、国家のデジタルプラットフォーム基盤を構築すべきと・・・。

ミャンマー視察報告、第2弾「ミャンマーの個人認証」に続きます。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年3月17日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。