新型コロナウイルス感染症対策専門家会議提言(3月19日)が伝えていること

専門家会議の結果を報じるNHKニュース(3/19)=編集部引用

昨日、専門家会議の提言が行われましたが、素晴らしい内容でしたので、少し自分なりの認識をまとめておきたいと思います。原文も、ぜひお読み下さい。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020 年 3 月 19 日)

1.「実効再生産数」がコロナ対策のKPIである

「日本全国の実効再生産数は、日によって変動はあるものの、1をはさんで変動している状況が続いたものの、3月上旬以降をみると、連続して1を下回り続けています。今後とも、この動向がどのように変化するのか、注意深く観察を続けながら、状況に応じた必要な対応をその都度、機敏に講じることが求められます」(3月19日専門家会議提言より)

実行再生産数とは、1人あたりが生み出した 2 次感染者数のことです。

北海道では2月28日の知事による緊急事態宣言後、0.9から0.7に減少したことと、クラスター(患者集団)を把握できていることから、専門家会議も感染増加を抑えられていると判断しています。

他方、欧州並の2.5になってしまうと新規感染者は10万人あたり1日5,414人に。62日目には重篤患者が1,096人となり、地域の人工呼吸器の数を超え、死亡率の急上昇につながると指摘しています。

再生産数の上昇をおさえこむことが、コロナ対策の課題であることが理解できます。

2. クラスター連鎖によるオーバーシュート(爆発的患者急増)を避ける

「もしオーバーシュートが起きると、欧州でも見られるように、その地域では医療提供体制 が崩壊状態に陥り、この感染症のみならず、通常であれば救済できる生命を救済できなくなるという事態に至りかねません」(同上)

専門家会議は、感染に気づかない人たちによるクラスター(患者集団)が大規模化、連鎖することでオーバーシュート(偶発的患者急増)が発生。その結果、イタリアやスペイン、フランスでは数週間の都市封鎖、外出禁止、店舗閉鎖といった「ロックダウン」を取らざるを得なくなっていると指摘しています。

欧州と異なり日本が抑え込んでいるのは、クラスター対策を徹底し、オーバーシュート化による再生産数急増を避けているからと、専門家会議やWHOは評価しています。同時に、クラスター対策を指揮する専門人材や予算の確保、自治体間の広域連携、感染者情報の共有といった、対策強化も強く提言しています。

3. 我々一人一人が、集団感染が発生しやすい「3条件」を避ける

「もし大多数の国民や事業者の皆様が、人と人との接触をできる限り絶つ努力、「3 つの条件が同時に重なる場」を避けていただく努力を続けていただけない 場合には、感染に気づかない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じえます。そして、ある日、オ ーバーシュート(爆発的患者急増)が起こりかねないと考えます」(同上)

同時に専門家会議は、政府/自治体によるクラスター対策では不十分であり、国民一人一人が次の3つの条件を避ける努力が必要だと指摘しています。

①換気の悪い密閉空間
②人が密集している
③近距離での会話や発声が行われる 

韓国の宗教イベント、東京の屋形船、大阪のライブハウスはいずれも上の条件を3つ満たしていました。現在感染が続いているか、収まっているかに関わらず、この条件が重なることは回避する必要があると指摘しています。

4. 感染状況によって、今後の対応が変わる

「社会・経済機能への影響を最小限とし ながら、感染拡大防止とクラスター連鎖防止の効果を最大限にしていく観点から、地域の 感染状況別にバランスをとって必要な対応を行っていく必要があります」(同上)

さらに専門家会議は、地域の感染状況に応じて対応が異なることも示しています。

①拡大地域・・危機を乗り越えられるまで一律自粛
②収束地域・・3条件が重なる場は回避しつつ、リスクの低い活動から解除。感染拡大の兆しがあった場合は再び停止
③感染が確認されない地域・・リスクの低い活動から解除

地域によってはイベントの開催も認めたものですが、同時に感染状況やクラスターの動向によって、地域のステージを臨機応変に変えなければならないと指摘しています。なお、他には学校休校は、拡大地域以外ではそこまで意味がないとも認めています。

5. 所感

世界中がコロナウイルス対策に追われる中で、日本の現状をいかに評価すべきか。感染度合いが異なる地域ごとにいかに対応すべきか。また政府・自治体がクラスター対策や重症患者対策をすすめる中で、個人一人一人や各事業者が何をすべきかを明示できている点で、素晴らしい内容だと感じました。多くの方に提言を読んで頂きたいと思います。


編集部より:この記事は、一般社団法人RCF 代表理事、藤沢烈氏の公式note 2020年3月20日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は藤沢氏のnoteをご覧ください。