アジアに2つ目の「Google for Startup Campas」 が東京に出来ました。昨年、アジアで最初に出来たソウルのCampasを視察に行きましたが、日本に無いことを残念に思いながらも、デジタル国として先行している韓国、尚且つソウルにあるのは当然かもしれないと心の整理をつけていました。それが、Google Japanが六本木から渋谷に転居してくることが転機になったのでしょうか、Startup Campasがつくられることになったのです。喜ばしい限りです。
「Google for Startup Campas」は、マドリード、ロンドン、テルアビブ、ワルシャワ、サンパウロ、ソウル、これまで6か所開設されていて、東京で7か所目となります。Googleがスタートアップが求めるサポートを提供してくれ、それが起業を進めていく上で大きな力になること。そして、Campus7か所の国際ネットワークがビジネスの機会を広げていくこと。そして、何と言っても、Google社員が同じ建物にいて、話が出来ること、それがモチベーションになると思うのです。
僕が視察に行った時は、Campusに入居するスタートアップの選定をしているところでした。最初に入る企業は、当人たちのモチベーションを含めて、Googleもそれなりの覚悟をして選定するのだろうと思います。新設校の新入生とはそういうものかもしれません。
僕もそうですが、人と話をすることで、自分の考えがまとまる。思いもよらぬアイデアが浮かぶ。良くあることと思います。しかし、それは中途半端な能力や技術力を持つ人と話しても、刺激にはならないという現実もあります。その意味では、Googleにとっても、社員がスタートアップを志す人たちよりも魅力的で能力が高くないと意味をなさないということになります。Google社員にとっても自らの向上を求め続けなくてはならない環境をCampusによってつくられているのかもしれません。
僕は政治の世界しか知りませんが、政治の世界を伝え、アドバイスを行ったとしても、足元を見られるようであれば、相談者にとっては時間の無駄ということになります。これではお互いにとって無意味であると同時に、社会にとって無意味な時間ということになります。人と人との出会い、共有したコミュニケーションの時間は、合算され世界的に見れば莫大な時間となります。それらは人類の時間であって、その1分1分が社会の為に有益であれば、それが社会の進化に繋がると思うのです。
Googleは正に社会課題の解決の為に、Startup Campasを使い、莫大な時間の一部を費やしているのだと思います。社会課題を解決する新たなビジネスに関する真剣勝負、その道場が「Startup Campus TOKYO」であって欲しいと思います。ここから卒業する企業が、更に後輩を育て、循環する仕組みを構築できることを望みます。
一方で、日本の企業は、こうした真剣勝負の道場を持っているのでしょうか?富士通Campus、NECCampus、NTTCampus聞いたことはありません。自社内にStartup企業を受け入れ、サポートしながらの真剣勝負、そして社会課題の解決に向かう・・・・。サポートできる人材がいるのでしょうか?それとも他の手法を用いていたのでしょうか?
経済の低迷した30年、大卒初任給も3万円しか上昇してません。何が間違っていて、これから何をしていかなければいけないのか・・・。デジタル社会、IT社会、DX社会、向かうべき方向は分かっているはず、なら・・・。あのGoogleですら、新たなアイデアに触れる環境を自ら整備し、コミュニティづくりもしている。GAFAを締め上げるだけでなく、本質的にやるべきことが他にあるのではないだろうか、改めて考えさせられます。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年3月21日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。