年末と年度末、さっと読んでいると読み落としがちですが、全然意味が違います。年末は暦上の意味ですから12月31日です。年度末とは会計的な意味を基準としています。特に日本の場合は役所の会計期間が4月1日から3月31日、企業の決算は大小取り交ぜれば2割ぐらいが3月決算ですが、資本金100億円以上ですと4分の3が3月決算とあります。役所の決算にリンクした方がよい業種、例えば建設業など役所からの受注を重視しているところはどうしてもそれにすり合わせることになるのでしょう。
四半期決算を4つ合わせた最後の年度末決算は企業の成績表ともいえます。5か年計画、3ヵ年計画、年度計画など様々な計画と見直しを行いながらこの決算最終日を迎えます。この結果は早ければ2-3週間後からちらほら見えてくることになります。
リーマンショックを受けた年の決算となる2009年3月末、NYダウも日経平均もそのチャートを見ると大底となっています。リーマンショック自体は08年の秋でありますが、株価そのものは07年夏にピークをつけていました。その時がアメリカの住宅バブルのピークでもありました。そこからじわっと下がり始め、1年経った08年秋、辻褄が合わないMBS(不動産担保証券)が判明、経済は奈落の底に向かいます。が、09年3月末を起点としてそこから見事な立ち直りを見せます。
同様に2002年のSARSの時もそうでした。当時のダウのチャートを見るとITバブル崩れとその後の持ち直しという中でSARS発生前から株価は怪しかったのですが、03年3月末に見事に2番底をつけます。日経平均はなぜか1か月遅延して4月末に底入れ、そこから07年の高値に向かって躍進しているのです。
欧米の会社は12月決算が主流でありますが、3月末頃が底になるという符号の一致が見て取れます。これが春の目覚めなのか、アノマリーなのかわかりませんが「二度あることは三度ある」になってもらいたいところではあります。
日本企業の今回の決算の場合、最大のキーは評価損のリスクでありましょう。3月31日の株価終値に対して企業が持つ上場株式の評価が半分以下になった場合、評価損を計上することもあり得ます。(この評価損は株価の回復があるのかないのかを見極めなくてはいけないので一概ではありません。ただし、日本郵政とゆうちょ銀行のような親子の関係の場合は見直しが必至かもしれません。)
毎年、この時期になると企業の経理財務担当者は株価が気になってしょうがないわけですが、それは「日本の企業決算の集大成」にもつながるからであります。当局としてもできる限りのPKO(株価維持政策)か「お化粧買い(ドレッシング買い)」と称するような小手先対策はしたいところであります。個人的には日銀の「よいしょ」などで下値支えをするのはナチュラルではないかと思っています。
正直、今回の決算において各企業は「あきらめムード」が漂い、すでに多額の損失計上見込みを発表する大手商社もちらほら見受けられますが、見方を変えれば「どこの企業決算もボロボロだから自分のところだけが恥ずかしい思いをしなくてもよい」という開き直り決算ともいえるのかもしれません。それが03年のSARS決算、09年のリーマンショック決算であり、膿を出し切り、明日からは希望に燃えた新しい一年が始まる、ということになります。
ただし、今回の場合、世界で膿が出し切れないというリスクが残ってしまいました。少なくとも4-6月の四半期決算までは大荒れで企業によってはこれからが本番というところも多いのかもしれません。どういう展開になるのか今後数カ月たたないとわかりませんが、印象深い年度末を迎えたという点では後々の語り草になるのかもしれません。
経理財務担当者の頭痛は簡単に収まらないのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月31日の記事より転載させていただきました。