「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の“尾道3部作”などで知られる映画監督の大林宣彦さんのお話を聴いたのは1度しかないが、強烈に印象に残っている。
2017年東京で開催されたショートショート フィルムフェスティバル & アジア2017のゲストスピーチのこと。
主宰する俳優の別所哲也さんのこだわりで、主催者や来賓の冒頭の挨拶や表彰状の読み上げもない、ショートショートにふさわしい、非常にテンポの良い進行の中で、当時、肺がんのステージ4で余命3か月を宣告されていた大林さんは2分の持ち時間のところを、30分近く滔々と語り続けた。
・戦争ほど悲惨なものはありません。
・戦争の狂気を止めるのは人間の正義ではなく正気です。
・映像は時に間違ったものを記録する。しかし、間違いこそが狂気を暴くのです。映画とは大嘘つきのものです。
そして、最後は黒澤明監督から引き継がれた言葉を引用しながら、若い参加者に思いを託された。
・黒澤さんがよく言われたんです。会社制度から離れてようやくアマチュアになれた。アマチュアというのは自由に表現できるんです。自由な表現が戦争を止めるんです。
・映画には戦争を救う、必ず世界を平和に導く美しさと力がある。しかし、戦争はすぐには始められるけど、平和をたどり寄せるのは少なくとも400年はかかる。
・「俺の続きをやってよね」「俺の続きをやってよね」「俺の続きをやってよね」3回言われたことが、今でもよく覚えている。
その後も、命の続く限り駆け抜けた大林さん。集大成として、『花筐/HANAGATAMI』や『海辺の映画館 キネマの玉手箱』の公開にこぎつけた。
今日は、自宅でゆっくり大林監督の映画を観ようと思う。
ショートショートフェスティバル&アジア2017におけるスピーチは、こちら。
もう少し知りたい!
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年4月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。