文在寅政権は勝つか?負けるか?どうなる韓国総選挙

高 永喆

韓国国会の総選挙があす(4月15日)に迫った。筆者は予断を許さないとみているが、聯合ニュースなどの韓国メディアは与党の共に民主党が過半数を獲得する見通しだと伝えているようだ。

その理由として文政権がコロナウイルスの対応に一定の成果をあげたことがある。しかしこれは文政権の成果とばかり言い切れない。前政権が築いた先端医療システムと優秀な医師団の功績に乗っかった格好だ。

期日前投票をする文大統領夫妻(韓国大統領府サイトより)

この2年、文政権は経済政策で失敗続きで支持率を落としてきた経緯もある。与党有利の論調のマスコミ報道に不信感を持つ有権者の存在も根強く、投票動向を最後まで見守りたい。

ここにきて文政権は最初に中国人の入国を止めなかった失策をカモフラージュしようと躍起になっているようにも思える。日本が韓国人入国者の待機措置を発表すると文政権は猛反発したが、中国が韓国人を隔離したことについては一言も非難しなかった。文政権の異常な反日と屈辱的な親中姿勢に反発する韓国民も少なくない。実際、昨年は反日教育に反対する高校生のデモがソウルを中心に広がったこともある。

文政権は2017年5月10日の就任以来、これと言えるほど成功した政策が殆ど見当たらない。「外交音痴」「安保音痴」「経済音痴」と指摘されてきた中で、今回の選挙は文在寅政権の審判となる。

文政権の「4大失策」はまず、最低賃金引上げで自営業者を破綻に追い込もうとし、財閥弾圧及び労働時間短縮は企業の生産性を著しく低下させ、経済は崩壊寸前状態だ。

2つ目は外交。屈辱的な親中と従北路線に走りながら反米、反日路線に傾いた愚策は韓国安保に致命的な障害を招いている。

3つ目はスキャンダル。「タマネギ男」ことチョグク前法相をはじめ、側近。親族の大掛かりな不正疑惑が国民の怒りを呼んできた。

さらに4つ目は日本ではあまり報じられていないが、青瓦台が地方選挙に関与し、不正選挙を主動した疑惑が反文在寅世論に火を付けたことである。

文大統領に対する厳しい国民世論をまとめてみよう。

まず外交。文大統領は、中国を国賓訪問した時、付き添いの記者が殴られても抗議ができず、一方的に譲歩している。長期独裁政権の金正恩に屈従しながら「おびえた犬」と悪口を言われても抗議出来ず従北するでたらめだ。

青瓦台Facebook

北朝鮮が核放棄を約束したとトランプ大統領をだまし、米朝首脳会談を手配して、結局は金正恩の権威を高めるだけに終わった。ローマ教皇が訪朝を約束したと伝えたが、これも実現しておらず、口先だけの政治が日常茶飯事だ。

原子力政策についても原発を廃棄してUAE、英国が受注をキャンセル。数千億ドルの損害をもたらした。それにも関わらず、チェコ大統領に韓国原発を売り込むなどデタラメが際立つ。

環境面では、綺麗な緑化森林山を伐採して粉塵が発生。中国産の太陽光を普及させ、重金属公害を誘発させた。石炭を燃やす火力発電所を増加させ、粉塵・公害を増加させた。世界10大輸出国でOECD優等生だった韓国を最低の評価にしてしまった愚策の数々により、国際社会における大韓民国の国威を失墜させた。

偽善的なひまわりポピュリズムとばら撒きにも関わらず、文政権の誤魔化しは次々とばれ、国民の反対世論が広がっている。その背景には国民がインターネットを通して、政治屋の誤魔化しを見抜いているからだ。しかし、数々の疑惑があったにも関わらず、文政権が倒れないのは、民主労働組合、教職員組合、言論組合と言う3大労働組合が政権を強固に支えているからだ。

ちなみに、韓国を動かす政治圧力団体は、高麗大学同窓会、ROTC戦友会、海兵隊戦友会、湖南郷友会を挙げられる。ほとんどが健全な保守右派団体だが、湖南郷友会のみ左派イメージが強い。その理由は湖南地方が伝統的に反骨気質が強い地域特性が背景にある。

昨年11月の右派による反政権デモ(Millar/flickr)

さて、韓国を動かすエリートグループと言えばSN(ソウル大、海軍将校出身)と言われる。在学中に司法、行政試験に合格して海軍将校試験にも合格3年の兵役を終えて政府官僚として出世した人々である。歴代政権の秘書室長を勤めた金淇春・前青瓦台秘書室長、文喜相・前国会議長、鄭義溶・国家安全保障室長らが代表的なSN出身である。

ただ、こういうエリートたちと成功した財閥は憧れの対象であるものの、強い妬みの標的にもなっている。格差社会に対する不平不満から発生する妬みである。だから、金淇春氏は文政権で逮捕され、大変な苦労を余儀なくされた。

エコノミストの友人がこんなことを言っていた。世界の多くの国では、出世したエリートや成功した特権層、富裕層、財閥は社会において1%前後。共産主義中国と北朝鮮さえ、約1%の特権層と富裕層が富を独占している。残りの99%は一般庶民層であり、うち25%が中間層。格差社会に対する不平不満は世界共通であるが、狡猾な政治屋たちはこのような国民の不平不満を唆して権力を手中におさめるのだ。

権力の象徴である金淇春元秘書室長を何度も逮捕したり、富の象徴であるサムスンやロッテグループのトップを逮捕もした。権力と富を独占する人々に対する庶民層の不平不満を満足させ、支持を得ると言う高度な政治工学である。朴槿恵前大統領も親子で大統領に出世した「特権層のお姫様」とでっち上げられた。

しかし、ネットを通じて多くの国民は政治屋の魂胆を見抜いている。今回の選挙は与党に対する国民審判といえ、庶民層を唆す与党の誤魔化しに不平が広がれば、選挙情勢は、報道されている情勢よりは与野党が拮抗する可能性もあるのではないか。

それでも与党が過半数を取って圧勝する場合、韓国は危険水域に入る恐れが強い。今回の選挙こそ、国運を左右する選挙であり、韓国民の賢明な選択が問われる。

(拓殖大学主任研究員、元 韓国国防省専門委員、分析官)