ファイヤーウォールという言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。一般的に認識されている意味はコンピューターやネットワークにおける外との通信で許可していない外部アクセスを防御することを意味します。ただ、これは狭義の意で本来は火事の延焼を防ぐための壁や間仕切りという意味です。(だからファイヤーウォールなのです。)
今回の新型肺炎の拡散を防ぐというのは一種のファイヤーウォールを作るという意味であります。ファイヤーを火事という意味ではなく、コンピューターのウィルスでもなく、医学的なウィルスの侵入防御とすれば意味はしっくりくるでしょう。
私が最近思うことは規制をいつ、だれがどうやって緩和していくのか、この判断が異様に難しいと思うのです。なぜなら専門家と称する人たちが様々な意見を述べ、一般の方は自分の好みの専門家の主張に同調する傾向があるため、統一された専門家の見解がかつてに比べ、形成されにくくなっているように感じるのです。
例えば緩和するのに新規感染者ゼロが〇日続くとか、感染者数が〇人まで減るといった明白な目的を立てずにとりあえず緊急事態だ、休業だと進んできていることにやや懸念を感じています。
これは欧米でも同様で適用ルールが政府、州、市町村などまちまちです。初めから市民にどういう水準になれば緩和しますという目標を提示していないので不安の迷路に入り込み、社会不和を起こすということになるのです。もしも数値的目標を掲げてくれたら市民の協力姿勢も変わるかもしれません。
つまり不安をあおるばかりではダメでどうしたらよくなるのか、出口はどこなのかをきちんと明示することも当局の本来やるべきことなのであります。
さて、コンピューターの世界におけるファイヤーウォールは今や当たり前で皆さんは普通にウィルス対策ソフトを使っていると思います。同様に我々の日常生活においてもファイヤーウォールができるのか、ここがポストコロナにおける一つの焦点であり、人々の行動変化を予測するものであります。
元ハーバード大教授で「デカップリング」の著者、タレス・ティシェイラ氏がポストコロナにおいて3つの人々の行動変化を予想しています。
1つめが大多数の人がひと塊になるビジネスの衰退(クルーズ産業など)、2つ目が同じ場所に長くとどまることを避けるようになる(レストラン、映画館など)、3つ目がエネルギー消費の増大(人との接触を避けるため自家用車の利用が増える)とあります。
個人的にはやや首をかしげるものもありますが、人と人の距離感が遠くなることはトレンドとして大いにあり得るとみています。
例えば私は少子化が促進されるとみています。理由は男女の恋愛が画面越しにしか展開せず、プラトニック ラブならぬオンライン ラブが当たり前になる気がするのです。それこそ、オンライン 結婚などもあり得るのではないかと思うのです。
今まではSNSでつながり、共感できる人たちが一つのつながりを頼りにリアルの世界を作り出していました。いわゆるコト消費です。これが否定された時、元に戻りにくくなる可能性は否定できません。
日本では今回の新型肺炎にかかわらず「外来種」というものに非常に敏感でした。たとえばヒアリが日本の港湾で発見され、大きなさわぎになったのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。われわれはグローバル化に喜んだものの難民問題で国境に壁を作りました。今回の新型肺炎でまた別の壁ができつつあります。そして今回の壁は国境だけではなく、人々の日常生活にも物理的距離を置くように指導されています。まさにファイヤーウォールなのです。
これがポストコロナの世界だと思うと我々の発想は180度転換しなくてはなりません。私はまだ疑心暗鬼ですが、可能性として無視できない状況にあると考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月14日の記事より転載させていただきました。