ポピュラー音楽の歴史と10大アーティスト

八幡 和郎

クラシック音楽を「学びたい」と思い立ったらいくらでも資料がある。本もあるし、ネットでも懇切丁寧な解説がある。ところが、ポピュラー・ミュージックの歴史を書いたもので知るというのは案外難しいのである。

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365日でわかる世界史 世界200カ国の歴史を「読む事典」』(清談社・4月12日発売)では、クラシックの名曲100のほかにそれにも挑戦してみようと思った。といっても斬新な試みなので、書く人がいない。

そこで、いろいろ考えて、友人の斉田才さんにお願いした。斉田サンはB’zなどを抱えるビーイング (Being, Inc.)ビーング・グループに属する音楽評論家であり、ライブハウスhillsパン工場店長をつとめ、大阪芸術大学でポピュラー音楽史の講座を持っておられたこともある。

どういう書き方をするかはだいぶ議論したのだが、名曲100選といったやり方にはもう一つ馴染まなかったので、アーティストを中心にした歴史にした。

項目は、ポピュラー音楽のルーツ、ポピュラー音楽の始まり、1950年代のポピュラー音楽、そのあと60年代、70年代、80年代、90年代、そして、21世紀と続く。以下そのさわりである。

ポピュラーミュージックとは何か

ポピュラー音楽とは語源をポップ(POP=通俗的な、大衆向きの)という意味から派生した言葉であり。ポピュラー・ミュージックとは広く大衆に支持され親しまれている音楽を指し、宮廷貴族のためのクラシックとは一線を画す。

本来は形なきもの(ソフトウェア)としての音楽が、レコードやCDといった形あるもの(ハードウェア)として生産されはじめ、広く流通していく過程でついには商品として大衆に消費されビジネスとして成り立っていくようになった。

エジソンによる1899年頃の蝋管蓄音機(Wikipedia)

エジソンが発明した蓄音機、そして設立したレコード会社により音楽産業は、それまでの演奏により賃金を得るビジネス(=ライブ産業)のみならずレコード産業への道を歩み始める。そして、初期のレコードでは、弦楽器より管楽器の方がよく記録できる。というわけで、音の大きなブラスバンドのラグタイム演奏が重宝されたというわけだ。

アメリカで生まれたポップスとは、ごくざっくばらんに説明してしまうと、西洋のメロディーとアフリカのリズムが合体したものである。のちに登場するロックンロールやリズム&ブルーズがまさにそれである。

この黒人たちの作り出す微妙にシンコペーションする音楽がラグタイム・ミュージックとなり19世紀末に世界的な大流行を生み出していく。

初期のラグタイムは、当時の生活を反映し、歩くテンポに最も近い2ビートで、それが発展していって、1920~40年代のジャズの興隆につながっていった。ジャズの原型は、ラグタイムと行進曲を奏でたブラスバンドにある。

Wikipedia

ロックンロールとは、1940年代アメリカの黒人社会では「セックスやホットなジャズ」を意味するスラングであった。その出現は、音楽の歴史上大きな分岐点ともいえる大事件である。それ以前の、音楽を聞く・演奏するという楽しみ方に、ロックンロールの登場は、レコードを買う(音楽の消費)ということを一般に広め、音楽産業がレコード産業として成長し拡大してゆくスタートラインとしても重要だった。

バックに使用され大ヒットしたのがきっかけだと言われている。

1950年代にそれはエルヴィス・プレスリーから始まった

R&Rは、10代の反抗や非行、暴力に関係する音楽であると大人たちは顔をしかめたが、それがかえって当時のティーンエイジャーの圧倒的な支持を集め社会現象にまでなっていく。そんな中、登場したのが、エルヴィス・プレスリー(「ハウンドドッグ」)だった。

エルビスを見出したサム・フィリップスは黒人のサウンドと黒人の感覚でR&Rを歌える白人がいれば大ヒットするであろうことを確信していた。

1956年、破格の契約金でメジャーレコード会社RCAに移籍、初の全米ネットワークに出演し彼が歌った「ハートブレイクホテル」は瞬く間に全米No.1となり、8週連続その位置にとどまった。

1960年代から21世紀まで

1960年代のポピュラー音楽シーンといえば何といってもビートルズの登場であろう。現在までも続くポピュラー音楽のイメージや影響力はビートルズ(「抱きしめたい」)がスタンダード・モデルになったと言っても過言ではない。

されなければいけないだろう。激動の60年代から70年代に入ると、ロックは様々な音楽性と融合しジャンルも拡大していく。

1980年代のポピュラー音楽シーンは、現在もポピュラー音楽シーンに影響を与え続けているスターの誕生、音楽テクノロジーの進化、新しいカルチャーの出現とこれもまた興味深い現象が次々と発生した時代でもある。

アナログ・レコードからCDへの移行、新しいポップ・スターたちの登場、MTVなどの新規メディアの出現などによって1990年代は、音楽シーンが最も活気付いた時代として記憶に残るかもしれない。

20世紀は映画の時代だった。19世紀のオペラや演劇から総合芸術としての地位を取って代わったのみならず、はるかに広汎な大衆を引きつけた。戦後はテレビの時代だが、基本的には映画の延長線上にある。そして、21世紀はネットの普及もあいまって、誰もが映像を提供できる時代になった。

10大アーティス&ビートルのベスト10

さらに、私が無理を言って、ポピュラー音楽史上の10大アーティストとその代表曲を選んでくれといったら次のリストが出てきた。各時代の解説も彼らの紹介を軸に進められていく。

それは以下の通りだ。10大アーティストの代表曲

  • エルヴィス・プレスリー → 「ハウンドドッグ」
  • ザ・ビートルズ → 「抱きしめたい」 「イエスタデイ」 ほか
  • レッド・ツェツペリン → 「胸いっぱいの愛を」
  • ピンク・フロイド → 「原子心母」
  • デヴィッド・ボウイ → 「ジギースターダスト」
  • マイケル・ジャクソン → 「今夜はビートイット」
  • プリンス → 「パープル・レイン」
  • マドンナ → 「ライク・ア・ヴァージン」
  • セックス・ピストルズ → 「アナーキー・イン・ザ UK」
  • ニルヴァーナ → 「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」

そのなかでビートルズがひときわ目立つ巨人であることはいうまでもないが、これも、斉田サンにベスト10を選んでもらった。

ビートルズ「抱きしめたい」(Wikipedia)

斉田才の選んだビートルズ名曲ベスト10:①抱きしめたい(1963)②キャント・バイ・ミー・ラブ(1964)③シー・ラブズ・ユー(1963)④イエスタディ(1965)⑤ヘイ・ジュード(1968)⑥レット・イット・ビー(1970)⑦ヘルプ(1965)⑧ゲット・バック(1969)⑨サムシング(1969)⑩エリナー・リグビー(1965)